生成AI時代、企業の採用と育成モデルはどう変わるのか
生成AIの普及は、企業の業務だけでなく採用にも影響を与え始めています。
クラウド導入支援などを手掛けるネクストモードが公開した調査では、生成AIの普及に伴い新卒採用の戦略を見直す企業が増えていることが明らかになった。調査では、生成AIを活用している企業の55.4%が新卒採用人数を削減したと回答しています。
これは単なる景気や人口減少の問題ではなく、生成AIによって企業の業務構造そのものが変わり始めていることを示しています。
生成AIが置き換えるのは「新人の仕事」
生成AIが得意な作業:例えば
- 情報収集
- 資料作成
- データ整理
- メール作成
- 議事録作成
こうした業務は、従来は新人社員が担当することが多かったのではないでしょうか。
つまり生成AIは「人間の仕事」を奪うというより、新人の仕事を最初に置き換えていると見ることもできます。
実際に、企業が採用人数を減らす理由として
- 生成AIを使える人材を採用したい(66.7%)
- 生成AI導入により必要な人員が減った(39.4%)
といった回答が挙げられています。
これは「人材が不要になった」というより必要な人材の質が変わったと考える方が近いでしょう。
採用の基準が変わり始めている
従来の新卒採用では
- 学歴
- コミュニケーション能力
- ポテンシャル
といった評価が中心でした。確かに社会人生活において、優秀であり社内でコミニュケーションが取れることは必要でしょう。しかし生成AI時代では、それに加えて
- 生成AIを使って情報収集できるか
- 生成AIを使ってアウトプットを作れるか
- 生成AIを前提に仕事を設計できるか
といった能力が重要になり始めています。企業が生成AIを導入し、生成AI前提でビジネスが進む以上これらのスキルがない前時代の人材が不要になるのは火を見るよりも明らかです。
もちろん、前時代の人材が全く不要というわけではありません。生成AIが使えなくても事業領域内での知見は今まで以上に価値があり、このような方々の知見をいかにして会社の資産 = 構造化データにして生成AIに与えていくかは重要です。
言い換えるのであれば、事業領域の知見がある場合に限り前時代の人材も必要だが、新卒のような前提とする知見がない場合は生成AI前提で学び・成長していける見込みがない場合は不良債権確定とも言えます。
これは企業側の採用だけでなく、学生の行動にも表れており、別の調査では、就職活動で生成AIを利用している学生は約7割に達していることが報告されています。
生成AIはすでに「仕事のツール」であると同時に、就職活動のツールにもなっているのである。
学生は何を訓練すべきか
では、生成AI時代に学生は何を準備すべきなのでしょうか。
重要なのは、リサーチする、スライドを作るといった単に生成AIを使うことではありません。
生成AIは誰でも使える。そのため差がつくのは次の4つの能力となるでしょう。
① 言語化能力(=コミュニケーション能力)
生成AIは非常に強力なツールです。しかし与える指示によって生成されるものは雲泥の差が生じます。
よく巷ではプロンプトエンジニアリングが話題になりますが、プロンプトエンジニアリングは突き詰めると言語化能力に大きく左右されます。
くだらないテンプレートを覚えるよりも、より相手(それが人間・生成AIに限らず)に伝わるように構造的に順序立てて話せるか・記載できるかが重要となります。
また最近ではコンテキストエンジニアリングの重要性も上がっています。自身が前提や既知としていることをメタ発想で伝えれるかどうか、伝わっているかどうか確認していく作業でより生成物のクオリティが変わります。
そういった意味で、今までよりもより高度なコミュニケーション能力ということもできるでしょう。

② 主体性(=情報収集能力 / 情報処理能力)
生成AIでは文章や資料を簡単に作れるため、新人は依頼されることも多いでしょう。しかし
- そもそも何を作るべきか
- どんな構造にするか
- 誰に向けた内容か
- 情報の真偽を確認できるか
- 一次情報に当たれるか
といった設計は人間が行う必要があり、依頼者から全て詳細に説明されるとは限りません。つまり、不足している情報を上司から適切に聞く、もしくは生成AIと壁打ちをして仮説を持って上司に確認をするということが必要になります。
指示待ちで言われたことだけをするのであればそれこそ生成AIに頼めばよく、生成AIに直接ではなく人間を経由して生成AIに作業させる意味はこれらを主体的にできるかどうかに尽きます。
生成AIを「使う人」と生成AIに「使われる人」の最大の差はここにあるといっても過言ではないでしょう。
また、生成AIを使うといっても使うツールや使い方にも注意が必要です。インフルエンサーの表層的な情報に騙されずに情報を収集し、適切に使えるように準備しておく能力も合わせて問われるでしょう。

③ ロジカルシンキング(論理的思考力)
これからの仕事では
- 生成AIに任せる仕事
- 人間が判断する仕事
を切り分ける必要があります。つまり重要なのは生成AIを使うスキルではなく、生成AIを前提に仕事を設計するスキルであり、さらにいうのであれば、設計・判断するために論理的思考力が必要なのはいうまでもないでしょう。
③ ラテラルシンキング(創造的水平思考力)
最後がラテラルシンキング(創造的水平思考力)です。
生成AIはその性質上、ラテラルシンキングがまだまだ弱いと言えます。言い換えると、ここは明確に人間が生成AIに勝てる数少ない領域の一つと言えるでしょう。
従って、生成AIができない発想の飛躍やアイディアを量産できる人はそれだけで生成Ai時代において今まで以上に重宝される存在といえます。
企業の「育成モデル」が壊れ始めている
もう一つ重要な変化があります。それは企業の人材育成の構造です。
多くの日本企業では
新人
↓
簡単な業務
↓
経験を積む
↓
高度な業務
という育成モデルが存在してきました。
しかしAIが新人の業務を担うようになると、新人が経験を積む機会そのものが減る可能性があり、これは単なる採用問題ではなく企業の人材育成モデルそのものを揺るがす問題でもあります。
企業側としては、どのように事業領域の知見(=ドメイン知識)をつけさせていくかを再設計しなくてはいけませんし、採用される側としては企業が生成AI時代の働き方前提で人材育成計画を立てているかをチェックする必要があります。
ただ生成AIの使い方研修がある企業は2つの意味で危険な企業と見られる可能性が極めて高いといえます。
生成AI時代、企業と学生の双方が問われる
生成AIの普及によって、企業は
- 生成AIを前提にした組織設計
- 生成AIを使える人材の採用
- 生成AIと人間の役割分担
を考える必要があります。
そして学生は生成AIをただ使うだけでなく、
- 言語化能力
- 主体性
- ロジカルシンキング
といった生成AIに一見直接関係がないような能力を学生時代から身につけることが重要になります。
生成AI時代の仕事は「生成AIを使う人/企業」と「生成AIに置き換えられる人/企業」に明確に分かれます。
企業も学生も前者になれるよう、前者であると評価されるように迅速に準備と対策が必要にすります。
まとめ
生成AIの普及は、仕事の形を大きく変えるだけでなく、すでに新卒採用という入口にまで影響を与えています。
AIをどう使うか。
AIとどう働くか。
これは企業だけでなく、これから社会に出る学生にとっても重要なテーマになります。
新卒というだけで大した能力も見られず手厚く迎え入れられる時代は終わりました。
AIインサイト編集部では、企業のAI導入やAI活用の戦略についての研修や導入支援などの相談も受け付けています。生成AIの活用やAI時代の人材戦略について興味がある企業は、AIインサイト編集部までお問い合わせください。
また、これから就職を控える学生で生成AI時代に求められるスキルを身に付けたい方も無料相談を受け付けていますので是非お問い合わせください。
(writer:宮﨑 佑太)

