DeNA AI Dayから見えた生成AI時代の戦い方

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本記事を10秒でまとめると

DeNA AI Day 2026では、生成AI導入による効率化の成果だけでなく、生成AI時代の競争環境の厳しさが率直に語られた。
「中途半端な専門性は一撃で淘汰される」「速さこそが命題」といった南場智子氏の発言は、生成AI時代のビジネスがすでに新しいルールで動き始めていることを示している。


DeNA AI Day2026とは

2026年3月6日に開催された「DeNA × AI Day 2026」は、DeNAが進めるAI戦略の現在地を示すイベントです。

DeNAは2025年に

「AIを駆使して効率化を徹底的に追求し、半分の人員で現業を維持するだけでなく、さらに発展させる」

という方針を掲げ、「AIオールイン」を宣言しました。

その1年後にあたる今回のイベントでは、生成AIによる業務効率化の成果だけでなく、生成AI時代の競争環境や組織のあり方についても多くの示唆が語られています。

特に会長の南場智子氏の発言では、生成AI導入の成功談だけではなく、生成AI時代のビジネスにおいて何が起きているのかという現実が率直に語られました。

本記事では、その発言を手がかりに、生成AI時代の企業経営とビジネスの競争構造を整理していきます。


AIは「ツール」ではなく「スタッフ」になった

南場氏はこの1年のDeNA内の変化を次のように表現しています。

「ほぼ全ての現場で『コードを書く』という作業が激減した」

さらに次のような事例も紹介していました。

「プロジェクトによっては、今までやっていた作業の5%を人間が、95%をAIが担っているものまである」

これは決して誇張ではなく、実際に生成AIの進化により、ソフトウェア開発の現場ではコード生成やデバッグの多くをAIが担うケースが急速に増えています。

南場氏はAIの役割の変化を

「AIは単なる『サポートツール』から、共に働く『スタッフ』へと進化した」

続けて語っています。生成AIが単なるツールであれば、人間の作業を補助する存在にとどまるはずです。しかし生成AIがスタッフとして機能させれた場合、仕事の構造そのものが変わります。

実際、DeNAではAI活用によって

・開発エンジニアの生産性20倍
・リーガルチェック工数90%削減
・配信審査コスト60%削減

といった業務改善が生まれています。

ここから見えてくるのは、生成AI導入の目的は「作業効率の改善」ではなく、業務プロセスの再設計にあるということでしょう。

生成AIを導入しても、既存の業務フローをそのまま維持という企業がほとんどだと思います。しかし生成AIを前提として仕事の構造を再設計することで、初めて大きな生産性向上が生まれることの先行事例がまさにDeNAと言えるでしょう。


生成AI導入より難しいのは組織改革

一方で、生成AI導入による効率化が必ずしも組織改革につながるわけではありません。

南場氏は以下のような発言もしています。

「作業が楽になった分、空いた時間にさらに仕事を詰め込んでしまうのです」

「新規事業への人材シフトが想定していたほどには進んでいないのが現状です」

これは多くの企業で起きている現象でしょう。

生成AIによって作業時間が短縮されると、本来は人材を新しい領域へシフトできる。
しかし実際には、空いた時間で新しい業務を追加してしまうことが多い。

南場氏はこの状況を踏まえ、次のように続けています。

「『先に人を動かす』ことの重要性です」

つまり、生成AIによる効率化を前提に、意図的に人材配置を変えなければ組織は変わらないということです。

生成AI導入を議論する企業の多くは、ツールやプロンプトの話に集中しがちです。
しかし実際に難しいのは、ツールではなく組織のマネジメントであり、生成AI時代の組織改革は、

・人材配置
・評価制度
・意思決定のスピード

といったマネジメントの設計によって決まるということです。


「中途半端な専門性」は生成AIに淘汰される

生成AI時代の競争環境について、南場氏は非常に強い言葉を使っています。

「ファンデーションモデル(基盤モデル)の開発企業がいかに『無慈悲』であるか」

「中途半端な専門性は一撃で淘汰される」

これはAI産業の構造を考えると理解しやすいでしょう。

現在の生成AI市場では、OpenAI / Google / Anthropicといった巨大プレイヤーが莫大な資金を投入して基盤モデルを開発しています。

その結果、ChatGPTやGemini、Claudeなど汎用モデルの能力は急速に拡大しており、これにより、単純な「AIツール」や「AIサービス」は短期間で機能を吸収されてしまう可能性が極めて高いと言えます。実際にChaTGPTやGeminiは日々更新を続け、過去単一ツールとして外部に存在していた機能を次々と包含しています。

南場氏はこの状況を踏まえ、次のように語っています。

「『〇〇 × AI』における『〇〇(ドメイン)』の領域をどう定義するかが極めて重要」

つまり、生成AI時代の競争ではAI技術そのものではなくドメインの深さが重要になると主張しています。

生成AIを導入すること自体はもはや差別化にならない。重要なのは、その生成AIをどの産業知識と組み合わせるかであり、生成AIを導入後自社はどのドメイン領域で生成AIを活用していくかまで考えなければ存続危機になり得るとも言えます。


プロダクト競争は「速度」で決まる

生成AIの進化はプロダクト開発の競争ルールも変えています。

南場氏は次のように語っています。

「今、この瞬間の『UI/UXが優れている』という、スタティックなプロダクトの優位性は無意味になります」

かつては、完成度の高いプロダクトを作ることが競争優位でした。しかし生成AIによって開発速度が大きく向上した結果、状況は変わりつつあります。

「競合との差異に気付いた瞬間に修正する」

「このサイクルをびゅんびゅんびゅんびゅんと高速で回し続けること」

「相対的に重要性を増しているのが『ディストリビューション(流通・販売)』」

つまり、これからの競争は完成度よりも速度で決まり、さらに重要になるのが流通となります。生成AIによって開発が民主化された結果、作れること自体は競争優位ではなくなりました。

重要なのは

・市場に出すスピード
・顧客基盤
・販売チャネル

といったGo-to-Market戦略に完全に移行したと言えるでしょう。


日本企業に残された勝ち筋

残念ながら現状生成AI競争の中心は米国企業です。そのため日本企業は不利だと考えられがちですが、南場氏は、日本にも強みがあると指摘しています。

「日本は、ハードウエアとソフトウエアを高度に融合させる『すり合わせ』が強い」

「日本にしかない『職人芸』や『匠の技』も存在します」

「これらの暗黙知を形式知化し、デジタル化して学習させることで独自のモデルを構築する」

生成AIは大量のデータから学習します。しかし、現場の暗黙知や職人技のような知識は、まだ十分にデジタル化されていない。

つまり、日本の勝ち筋は

現場の知識 × AI

しかないとも言えるでしょう。

製造業やサービス業など、現場の知識が重要な産業では、日本企業が持つデータやノウハウが大きな価値を持つ可能性を秘めています。


まとめ

DeNA AI Day 2026で語られた内容を、生成AI活用の成功談と捉えるのは浅はかとも言えます。むしろ、生成AI時代の競争環境がすでに大きく変わっていることを示しており、

・生成AIはツールではなくスタッフと捉える
・生成AIを導入する際は組織改革と一体化させる
・中途半端な専門性は淘汰される
・競争は速度と流通で決まる

ことは今後どのような企業でも避けれない学びとなります。さらに日本企業が国内外で今後も優位性を構築・維持するためには生成AIを使うという低次元から脱却し

どの領域で戦い、どのスピードで実行するのか

に尽きるというのが最大の示唆であったのではないでしょうか。

DeNA AI Day 2026は、生成AI時代のビジネスがすでに新しいルールで動き始めていることを示しています。この内容をふまえて今日から自社の状況を俯瞰し未来に向けてまずは組織改革と事業開発を進められるかどうかが全てと言えるでしょう。

writer:宮﨑 佑太(生成AIアドバイザー)

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この記事を書いた人

生成AI・教育コンサルタント
株式会社NEDLAB 代表取締役
株式会社SAKI COO
青楓館高等学院 Probono Menter

学校法人河合塾や株式会社リクルートで新規事業開発に携わった後に起業。教育・HRコンサルティングと事業開発支援事業を手掛ける。2023年からは生成AIを活用した事業開発・導入・運用支援事業を開始し、EdTech・HRTech企業や地方自治体を中心に数十社の支援も行う。現在、複数社でDX顧問・生成AIアドバイザーを務める。

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