AI Overviews(AIによる概要)が普及すると、検索結果で要約が完結し、CTRやセッションが落ちます。ここまでは単なる「現象」です。問題は、その現象を“失敗”と誤認して、予算・人員・優先度の意思決定を誤ることです。
結論から言うと、AI Overviews時代のSEOは「露出=クリック」ではなく、「露出=理解・信任=次アクション」に寄っていきます。だから、AIに選ばれやすくなる裏技を探すのは筋が悪い。やるべきは、指名・比較・CVで測り直し、成果が出る体験に設計し直すことです。

本記事のスコープ:AI Overviews時代はクリックが減る前提で、成果の見方を「指名・比較・CV」に寄せる必要が出てきます。本記事は、議論を前に進めるための実務として、GSC×GA4で何をどう測ればよいか——計測設計と週次運用に絞って解説します。
※AIO/AEO/LLMOの概念整理(なぜ“攻めの魔法”ではなく設計の話なのか)は、以下の関連記事でまとめています。

重要なのは、流入が減ること自体は必ずしもネガティブとは限らないという点です。ユーザーが「クリックして読む」から「答えを受け取ってから行動する」に移れば、クリックは“学習”ではなく“確認・比較・申込”に近づきます。セッションが減ってもCVRが上がり、CVが維持・増加するシナリオはあり得ます。
なぜ今、SEOの“効果測定”が重要なのか:AI Overviewsが既存KPIを壊す?
AI OverviewsがCTRに与える影響
複数の調査会社が一致して報告しているデータがあります:
- Seer Interactive(2025年9月): AI Overviews表示時、オーガニックCTRが1.76%→0.61%(-61%)に減少
- Ahrefs: トップ掲載記事でもCTRが平均34.5%-58%減少
- Search Engine Land: 広告CTRは19.7%→6.34%(-68%)
出典: Seer Interactive (2025年9月), Ahrefs, Search Engine Land
このデータを見て「SEOは終わった」というのは短絡的な判断です。AI Overviewsは、なぜなら”クリックの質が変化している”可能性があるからです。AI Overviewsが表示されるクエリでは、検索結果ページの時点でユーザーの疑問をかなり解消します。するとクリックは減りますが、そこで終わりではなく、“理解して納得した人だけが次に進む”構造になっていきます。実際、Google公式も「AI Overviewsからのクリックはより質が高い(滞在が長い傾向)」と述べています。
だからこそ、「成果を正しく捉える計測設計」が必要なのです。
まず“追うべき成果”を定義し直す:CTRではなく「指名・比較・CV」

AI Overviews時代のSEOを事業に接続するなら、KPIは3層で設計するのが良いでしょう。CTR/セッションは捨てませんが、主語を「意思決定に効く成果」に寄せるのがポイントだと考えています。
| 層 | 意味 | 見る指標 | 主に使うツール |
|---|---|---|---|
| ①想起 | 存在を知った/思い出した | 指名検索の表示回数、指名クエリのクリック | GSC |
| ②比較 | 候補に入った/検討に入った | 比較クエリの露出(表示回数)、順位推移 | GSC |
| ③行動 | 問い合わせ/資料DL/申込など | キーイベント(CV)、CVR、LP起点CV | GA4 |
この3層に分けると、CTRが落ちても「指名・比較・CVが伸びているなら勝ち」という判断ができ、予算と優先順位の議論が前に進みます。
前提:AI OverviewsはGSCで“単独抽出”できない。だから観測設計を進める
まず割り切るべきは、AI Overviewsだけを標準レポートで綺麗に切り出すのは難しいという現実です。Google公式は、AI機能での露出がSearch Consoleの検索タイプ「ウェブ」のパフォーマンスレポートに含まれる、としています。
Google公式(日本語):AI 機能とウェブサイト
ですのでそもそもの発想を切り替えましょう。「AIOだけ測ろうとする」ではなく、意思決定に影響を与えるKPI(指名・比較・CV)を包括的に拾うこと。そのためのGSC設計を行います。

【GSC操作】指名検索を“正規表現”で週次トラッキングする(想起の指標)
指名検索は、AI Overviewsの文脈で特に重要になります。なぜなら、クリックが減っても「思い出された/指名で探された」が増えるなら、露出が“想起に効いた”可能性が高いからです。
操作手順(GSC):
- Search Console → 検索結果のパフォーマンスを開く
- 検索タイプが「ウェブ」であることを確認
- 日付を「過去28日」にし、「比較」(前期間)を有効化
- 上部のフィルタで「+新規」→「クエリ」を選択
- 正規表現(カスタム)で、指名語をまとめて入力(例:サイト名、サービス名、商品名、著者名)
- 保存し、表示回数・クリック・順位の推移を週次で記録
GSCパフォーマンスレポートの基本(フィルタ・比較など)は、Google公式ヘルプを参照してください。
Google公式(日本語):パフォーマンス レポート(検索結果)
判定の目安:指名の表示回数が増えているなら「想起」は取れている。横ばい/減少なら、露出は取れても“記憶に残っていない”可能性が高く、記事の冒頭設計(結論・定義・固有名の出し方)が適切か見直しをすべきです。
【GSC操作】比較クエリを“辞書化”して、勝ち筋テーマを固定(検討の指標)
AI Overviewsでクリックが減っても、検討フェーズの入口として機能していれば、比較クエリの露出(表示回数)が伸びます。ここはクリックよりも表示回数と順位を重視します。
操作手順(GSC):
- Performance(検索結果)で、「+新規」→「クエリ」を選択
- まずは「含む」で比較語を当てる(例:比較/違い/おすすめ/料金/評判/選び方/導入/事例)
- 次に「ページ」フィルタで対象記事URLに絞る(比較記事/ガイド記事)
- 表示回数・順位が伸びたクエリをエクスポートして、勝ち筋クエリ辞書として固定
打ち手:比較クエリが伸びた記事は、比較表/FAQ/導入条件/料金・事例ページへの導線が“次の一歩”になります。AIで理解したあとにユーザーが求めるのは、だいたい「最後の確認」です。そこを取るための導線設計を見極めましょう。
【GSC×GA4】「CTR↓でもCV↑」を検出する:AI時代に起きる典型パターン
AI Overviews時代の典型がこれです。
- GSC:表示回数が増えたが、CTRは落ちた(クリックは横ばい〜微減)
- GA4:当該ページ起点のCV(問い合わせ・資料DL)が増えた
これは「クリックが減った=失敗」ではなく、「クリックが確認・申込寄りに高品質化した」可能性があると理解を変えましょう。Google公式も、AIによる概要が表示される検索結果ページからのクリックはより質が高い(滞在が長い傾向)と述べています。
Google公式(日本語):AI 機能とウェブサイト
実務の手順:まずGSCで「ページ」タブから対象URLを選び、期間比較でCTR/クリック/表示回数の差分を見る。次にGA4で当該URLのキーイベント(CV)推移を見る。ここで「CTRは落ちたがCVは上がった」なら、“入口”としての役割が変わったと判断できます。
【GA4】SEOを“事業成果”に接続する:キーイベント(CV)とLP起点CVで語る
ビジネス活用の肝は、SEOをPVやセッションではなく、CV(商談・問い合わせ・登録など)への貢献で説明できる状態にすることです。

Step1:キーイベント(コンバージョン)を定義する
- GA4 → 管理 → イベントで主要イベントを確認
- 問い合わせ送信・資料DL・会員登録などをキーイベントに設定
- サイト側の実装漏れ(タグが抜けているページ)がないかも点検
ここが曖昧だと、SEO検証の足元がグラグラになります。キーイベントは最初に固めるべき項目です。
Step2:LP起点で「どの記事がCVに寄与したか」を見る
「記事が読まれなくなった」と言う前に、LPを起点としたCVで確認してください。AI Overviewsの影響で回遊が減っても、入口としてCVに貢献していれば、それは有益なコンテンツと言えます。いわゆるアトリビューション分析です。
【連携】GSC×GA4をリンクする(“Libraryで公開”まで)
GSCとGA4をリンクすると、GA4側でSearch Consoleレポート(クエリ/ランディングページ等)が扱えるようになり、意思決定が速くなります。手順と注意点はGoogle公式(日本語)にまとまっています。
Google公式(日本語):Search Console を Google アナリティクスに接続する
重要:Search Consoleのレポートコレクションはデフォルトで非公開です。GA4でレポートが見当たらない場合は、左ナビの[ライブラリ]からSearch Consoleコレクションを公開してください(Google公式に明記)。
Google公式(日本語):[GA4] 検索クエリレポート(レポート公開=ライブラリ)
GSCとGA4の数字が一致しないのは正常
現場でよく揉めるのが「GSCのクリックとGA4のセッションが一致しない」問題です。これは異常ではなく、計測の定義・仕組みが違うために起きます。Google公式も不一致の理由と扱い方を整理しており、トレンド(傾向)で捉えるべきだとしています。
Google公式(日本語):Search Console と Google アナリティクスのデータを SEO に使用する
結論としては、Search Consoleは「検索結果での行動」、GA4は「サイト内行動」をトラッキングした結果です。AI Overviews時代はなおさら、両者を混ぜて一つの数字に“寄せない”ように気を付けましょう。役割分担して意思決定するのが正解です。
まとめ:SEO運用タスクのテンプレ
前述のステップを運用表にまとめました。AI Overviewsが普及し今までのSEO業務が実態に合わなくなっても、これに沿って運用すれば「何を伸ばすべきか」「何を直すべきか」で迷う必要がなくなります。CTRは副指標で、主語は常に指名・比較・CVです。
| タスク | 使うツール | 操作(要点) | 見る指標 | 判断 | 次アクション |
|---|---|---|---|---|---|
| 指名検索を追う | GSC | 過去28日+比較/クエリ正規表現で指名語 | 指名の表示回数・クリック | 想起が取れているか | 冒頭に固有名・結論・定義を強化/著者情報を強化 |
| 比較クエリの露出を追う | GSC | 比較語でクエリフィルタ+ページでURL限定 | 比較クエリの表示回数・順位 | 検討入口として機能しているか | 比較表/FAQ追加、料金・導入条件への内部リンク増 |
| CTR↓でもCV↑を検出 | GSC+GA4 | GSC:ページ別の差分→GA4:LP起点CV | CTR/クリック(GSC)+CV(GA4) | クリックの“質”が変化したか | CTA位置最適化、フォーム摩擦削減、次アクション短距離化 |
| SEO起点CVを週次報告 | GA4 | キーイベント/LP別のCV推移を確認 | キーイベント数・CVR | 事業成果として増減したか | 勝ち筋LPへ集中(リライト、追加記事、導線改善) |
| 数字の不一致を説明 | GSC+GA4 | 無理に一致させず、役割分担でトレンドを見る | クリックとセッションの傾向 | トレンドが一致しているか | 公式根拠で説明しKPIを固定(指名・比較・CV) |
参考(一次情報):Google公式(日本語)のみ
この記事は一次情報をGoogle公式(日本語)に限定しています。本文中にもリンクは置きますが、検証・監査・社内共有のために、根拠をここに集約します(どの主張の根拠かも併記)。

