サンデーAI_2025.07.21|生成AIで資料動画化と投資転換

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サンデーAI_2025.07.21|生成AIで資料動画化と投資転換

2025 年 7 月 21 日|発行:サンデーAI編集部


今週の生成AI NEWS

・OpenAI、macOS アプリに “Record Mode” を正式追加──リアルタイム議事録とアクションアイテムを自動生成
・Google Workspace、「Video Overviews」を公開──ドキュメントを 3 分解説動画に変換
・EU、GPAI ガイドライン草案(7 月 18 日付)を公表──一般目的 AI へ初の登録義務案
・Slack、企業横断 AI 検索・スレ要約を正式実装し情報洪水を“要点 Push” 型に刷新
・CloudNative 調査:AI セキュリティ投資が支出順位 2 位へ後退、“守り→攻め” 転換が顕在化

今週は、オフィス実務の“ど真ん中”に AI 自動化が入り込み、同時にガバナンスとコスト最適化の議論が前面化 した。OpenAI と Google は議事録生成・資料動画化という“面倒だけれど不可欠”なタスクを AI に肩代わりさせ、生産性の新基準を提示。

EU は GPAI ガイドラインでモデル単位の説明責任を法制化する方向を示し、Slack は社内ナレッジを AI が整理するフェーズへ突入。さらに CloudNative 調査は、企業が “AI をどう守るか” から “AI でどう稼ぐか” へ視線を移し始めたことを証左した。

目次

今週のAIニュースダイジェスト(5件)

OpenAI “Record Mode” を macOS アプリに正式追加

ChatGPT macOS 版に新モード。マイク入力をローカル保存しながら Whisper‑V3 でリアルタイム文字起こし、議論構造を GraphQL 形式で解析し、終了時に議事録・TODO・担当者割当を自動出力。Pro/Team/Enterprise に加え Free ユーザーにも録音 15 分/日を開放。

ここがミソ!: “AI が黙って録って要約する” ことで、ホワイトカラーの「書記ロール」が消滅。Zoom、Notion など録画 SaaS を横串で奪いに行く動きで、会議ソフト選定基準が「画質」から「AI 付加価値」へ転換。録音データの暗号化や社内持ち出し制限をどう設計するかが情シスの新課題に。


Google Workspace「Video Overviews」公開

Docs、Slides、Sheets、PDF をアップロードすると Gemini がストーリーボードを自動作成、読み上げ原稿と BGM を生成し 1080p/30fps の解説動画を最長 3 分で出力。字幕・ブランドカラー適用・チャプター分割をワンクリックで指定可。

ここがミソ!: 「資料+語り」制作がメール添付レベルの手間に。営業・CS・研修のプレゼン作成時間を 70 % 以上圧縮しつつ、“誰がどこで離脱したか” の視聴解析データが取れるため、提案内容の PDCA が可視化される。動画ベースの社内ナレッジ蓄積が標準化すると、文章設計より“3 分脚本術”が新たな基礎リテラシーになる。


EU、GPAI ガイドライン草案を公表

AI Act 施行を前に、一般目的 AI モデル(GPAI)に対し「モデルカード+訓練データ概要+評価メトリクス」を提出する登録義務を提案。高リスク用途の場合は追加文書提出と第三者監査を要求。施行猶予は 12 か月と短期。

ここがミソ!: “モデルの車検証” が法的に必須になれば、LLM ベンダーは開発コスト増を価格転嫁せざるを得ない。さらに“データ概要”公開は訓練競合を利する恐れがあり、EU 市場向けにパラメータやデータセットを切り分ける“リージョン別 AI”の流れが加速する。


Slack、AI 検索・スレ要約を正式実装

全ワークスペース横断の自然言語検索と、長いスレッドを自動要約し DM で配信する「Catch‑up」機能を GA。要約には “残タスク” を赤字で抽出するオプションあり。

ここがミソ!: “情報洪水のプッシュ整理” が実現し、未読スレを追う精神コストが激減。Slack に蓄積した非構造データが AI により「即席イントラナレッジベース」へ昇格する。検索ヒット率が SharePoint を超えたとの社内テストも公表され、企業ポータルの座が揺らぐ。


CloudNative 調査:AI セキュリティ投資が順位 2 位に後退

: 7,400 社アンケート。昨年 1 位だった「AI セキュリティ」は 2 位に後退し、1 位はクラウドインフラ最適化。理由は「基本対策は完了、ROI が見えにくい追加投資を抑制」と回答。代わりに新規投資対象として「AI‑driven FinOps」「生成 AI プロダクト化」が浮上。

ここがミソ!: 初期ブームの高揚期が終わり、経営者は “守りコスト→収益化コスト” へ財布をシフト。セキュリティ部門は KPI を“脅威数削減”から“AI の安心利用率向上”に再設計しないと予算が削られる。

注目トピック解説

注目トピック 1:Google「Video Overviews」が示す“資料≒動画”の新常識

社内資料も営業提案も「読むより観る」が当たり前になる──それが Video Overviews の本質だ。

Gemini は段落の論理構造を解析し、①フック→②問題提起→③解決策→④次のアクション という 4 ステップで 3 分動画を自動生成する。画面レイアウトはスライド原稿を基に アイキャッチ→キーポイント→エビデンス の順でモーション表示し、人間は配色やトーンを選ぶだけ。


実践企業では営業 25 名が毎週作る 50 本の提案資料を一括動画化し、視聴ログを Salesforce に連携。結果、提案受領後 24 時間以内の顧客レスポンス率が 42 %→61 % に向上した。同時に動画離脱ポイントを BI で可視化し、冒頭 15 秒の“課題インパクト”パートを強化する PDCA が回り始めている。


但し、AI が外部情報を誤引用したり Nuance を取り違えたりするリスクも現実的。Microsoft 365 Copilot の“幻動画”問題が示すように、一次情報リンク・引用文献リストを併せて提示 するチェックフローが欠かせない。

また、動画量産は社内共有サーバーのストレージ圧迫を招くため、H.266 ベースの可変ビットレート配信や CDN キャッシュ設計を含む“社内動画 DevOps”を一緒に考える必要がある。

宮﨑 佑太(生成AI活用アドバイザー)

「まず“人が見る動画”と“AI が分析する動画”を分けよう。前者は訴求力、後者はデータポイントを稼ぐ。顧客視聴ログを CRM に流し『動画離脱 30 % 以下なら見込み度 A』といった営業 KPI を設計すれば、資料作成→商談フォローまで一気通貫の AI パイプラインが完成します。」

那須 康史(AIインサイト編集長)

「PowerPoint が 30 年支配した ‘書く→話す’ 文化は“作る→観る→測る”文化に置き換わる。企業広報や IR もテキスト開示から動画開示へのシフトを迫られ、メディアリテラシーと動画編集リテラシーの境界が曖昧になるだろう。」


注目トピック 2:CloudNative 調査が示す“AI セキュリティ飽和”と投資の再配分

AI セキュリティは昨年まで「まず守れ」の合言葉で予算を獲得したが、今年は事情が違う。Zero‑Trust フレーム、アクセスログ強制暗号化、プロンプトフィルタリングなどの必須機能が整備され、CISO たちは “これ以上の追加投資が収益にどう繋がるか” を問われ始めた。


調査企業の 58 % が「ROI を可視化できないセキュリティ施策は今期停止」と回答する一方で、FinOps(クラウド費用最適化)やプロダクト化(AI 機能を顧客向けに転用)への投資を優先。

つまり守りは一巡し、次は “AI を攻めに使う部署へ予算移管” が起きている。具体例として、E コマース大手は “モデル監査ツール” の開発チームを解散し、メンバーを 「AI パーソナライズ推薦」 部隊へ異動させた。


ただし飽和は危険信号でもある。攻撃面では “水面下で AI を悪用するペネトレーション” が高度化しており、SBOM with Model Lineage(AI モデルのサプライチェーン証跡)や コンテキスト一貫性テスト など新たな守りが未整備。投資を攻めに振るにも “どの守りを維持し、どこを自動化で効率化するか” のグランドデザインが不可欠だ。

小野 晋(生成AIコンサルタント)

「CISO が AI 予算を守り抜くには ‘数字で勝てる武器’ が必要。インシデント回避率や監査工数削減を KPI 化しないと CFO に切られる。逆に ROI を証明できれば、セキュリティ部門が ‘攻めのデータ利活用’ のハブにもなれる。守りと攻めを二律背反で考える時代は終わったんです。」


関連タグ: 【議事録AI】【資料動画化】【GPAI規制】【Slackナレッジ】【AI FinOps】

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