東京都が生成AI基盤「A1」本格運用 6万人がAIアプリをノーコード開発

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本記事を10秒でまとめると

東京都は生成AIプラットフォーム「A1」の本格運用を開始した。約6万人の都職員が対象で、ノーコードで業務用AIアプリを作成・共有できる仕組み。開発したアプリは庁内だけでなく他自治体とも共有可能とされ、行政のAI活用を横断的に広げる基盤になる想定。

東京都、生成AI基盤「A1」を本格運用

東京都は2026年4月9日、生成AIプラットフォーム「A1(えいいち)」の本格運用を開始したと発表しました。対象は東京都庁の職員約6万人です。

A1は、職員が業務に活用できるAIアプリを自ら開発し、組織内で共有できるプラットフォームです。専門的なプログラミング知識を必要としないノーコード方式を採用しており、業務現場の職員が自らAIを活用したツールを作成できることが特徴です。

この取り組みは突然始まったものではなく、2025年9月から試験運用が行われていました。試験運用を通じて運用ルールや利用方法を整備したうえで、今回本格運用に移行した形です。

A1の開発は、東京都のデジタルサービス局と、都のDX推進組織であるGovTech東京が中心となって進めました。

「A1」とは何か

A1は単なるAIチャットツールではありません。
東京都が構築したのは、AIアプリを作るためのプラットフォームです。

職員はこの基盤上で、自分の業務に合わせたAIアプリを作成できます。例えば

・文書作成を支援するAI
・議事録を分析するAI
・問い合わせ対応を整理するAI

といったように、業務ごとにAIをカスタマイズできます。

さらに特徴的なのは、作成されたAIアプリが共有可能な点です。 一度作られたアプリは庁内で再利用できるため、似た業務を行う部署が同じAIツールを活用できます。これはイメージとしては

  • AIアプリを作る
  • 庁内で共有する
  • 他自治体にも展開する

という流れを想定した仕組みです。

つまりA1は、単なるAIツールではなく行政向けAIアプリの開発・共有プラットフォームといえます。

実際に作られているAIアプリ

東京都ではすでにいくつかのAIアプリの利用が進められています。代表例として紹介されているのは以下のようなものです。

契約仕様書作成支援AI
契約に関する仕様書の案をAIが作成し、担当職員の作業を支援します。

議会答弁検討支援AI
都議会の議事録などを分析し、答弁作成に必要な情報整理を支援します。

行政業務では文書作成や過去資料の参照が多く、こうしたAIの導入は業務効率の向上に直結しやすい領域です。生成AIは文章生成能力が高いため、特に

・政策文書
・報告書
・議会答弁
・契約関連資料

といった分野での活用が期待されています。

なぜ東京都はAI基盤を内製したのか

一般企業では、生成AIツールをそのまま導入するケースも多くあります。しかし東京都はAI基盤を内製するという選択をしました。背景として考えられるのは、行政特有の事情です。

まず重要なのがセキュリティとデータ管理です。行政では機密性の高い情報を扱うため、外部サービスに直接依存する形では運用が難しい場合があります。

また、行政業務は民間企業とは異なる独自のプロセスが多く、一般的な生成AIツールでは対応しきれないケースもあります。

そのため、東京都は

・行政業務に最適化したAI基盤
・安全に運用できる環境
・自治体間で共有できる仕組み

をまとめて構築する形を選んだと考えられます。

最大のポイント「自治体間でAIアプリを共有」

A1の取り組みで特に注目されるのは、AIアプリを自治体間で共有できる仕組みです。

一般的に、自治体のDXはそれぞれが個別に進めることが多く、同じようなシステムを各自治体が独自に作るケースも少なくありません。しかしA1では、東京都が開発したAIアプリを他自治体でも利用できる可能性が示されています。

もしこの仕組みが広がれば

  • 1つの自治体がAIツールを作る
  • 他自治体が再利用する

という形で、行政DXのスピードが大きく変わる可能性があります。行政のAI活用が自治体単位から全国レベルの共有モデルへ発展する可能性もあります。

名前の由来

プラットフォーム名の「A1」は、現在の1万円札の肖像として知られる渋沢栄一に由来しています。

渋沢栄一は「日本資本主義の父」と呼ばれ、数多くの企業や産業の基盤を築いた人物です。

東京都は、この名前に「AIアプリを生み出し、業務改革と都民サービス向上の基盤となる存在」という意味を込めたと説明しています。

まとめ

今回のA1の取り組みは、単なる行政DXの一例というよりも、行政向けAI App Storeの試みとして見ることもできます。

もしAIアプリが自治体間で共有される仕組みが広がれば

・行政AIアプリの共通基盤
・自治体AIツールの共有
・行政向けAIマーケット

といった新しい仕組みが生まれる可能性があります。

企業の世界ではすでにAIアプリを共有するプラットフォームが登場していますが、行政分野でも同様の流れが始まりつつあるのかもしれません。

東京都のA1は、こうしたGovTech(行政テクノロジー)の新しいモデルとして、今後の展開が注目されそうです。

writer:宮﨑 佑太(AI経営コンサルタント)

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この記事を書いた人

AI経営コンサルタント
株式会社NEDLAB 代表取締役

学校法人河合塾や株式会社リクルートで新規事業開発に携わった後に起業。教育・HRコンサルティングと事業開発支援事業を手掛ける。2023年からは生成AIを活用した事業開発・導入・運用支援事業を開始し、EdTech・HRTech企業や地方自治体を中心に数十社の支援も行う。現在、年間100回以上講演会を行いながら、複数社でDX顧問・生成AIアドバイザーを務める。

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