本記事を10秒でまとめると
デジタル庁は、行政向けAIプラットフォーム「源内」にて、 国産LLM(大規模言語モデル)の公募を開始 しました。 先行して、Preferred Networksの 「PLaMo翻訳」の採用が決定 。海外製モデルでは難しい「行政文書特有の日本語」への対応とセキュリティ強化が狙いです。 2026年度に試験導入、2027年度の本格提供を目指しており、行政の生成AI活用が「海外モデル依存」から「適材適所」のフェーズへ移行する重要な転換点となります。
ガバメントAI「源内」とは
デジタル庁が2025年5月から運用している内製AIプラットフォーム「源内(げんない)」はこれまで、Amazonの「Nova Lite」、Anthropicの「Claude 3.5 Sonnet」、OpenAIモデルなど、海外の強力なモデルを中心に構成されてきました。
参考:デジタル庁「ガバメントAI、プロジェクト「源内」の構想紹介」
https://digital-gov.note.jp/n/ndc07326b7491
今回の報道
2025年12月2日、デジタル庁は国内企業や研究機関が開発する「国産LLM」の公募を開始しました。世界最高峰の性能を持つGPT-4やClaudeがあるにも関わらず、なぜ今あえて国産モデルを公募するのでしょうか。発表資料から読み取れる理由は大きく2つです。
- 「霞ヶ関文学」への対応
海外製LLMは日本語も流暢ですが、行政文書特有の記述様式、いわゆる「霞ヶ関文学」のニュアンスや、日本の法令用語の厳密な解釈においては、国内のデータで学習されたモデルに分があります。 - セキュリティと自律性
行政情報は極めて機密性が高く、 政府共通のクラウド基盤上で完結して動作することが求められます。海外サーバーを経由せず、国内で推論が完結する環境を整備することは、安全保障の観点からも必須事項と言えます。
Preferred Networks「PLaMo翻訳」の先行導入
今回の公募発表と同時に、日本を代表するAI企業であるPreferred Networksが開発する 「PLaMo(プラモ)翻訳」 が、公募に先行する形で「源内」に採用されたのです。
PLaMo翻訳の特徴は、海外の既存モデルをベースにせず、設計から学習までを国内で完結させている点です。これにより、 長文でも欠落が少なく、行政文書独特の固い表現も「流暢な和訳」として出力可能 とされています。 デジタル庁内では今月中(2025年12月)から利用が開始され、2026年以降には他省庁へも展開される予定です。
PLaMo:https://plamo.preferredai.jp/
PLaMo翻訳:https://translate.preferredai.jp/
公募の詳細と今後のスケジュール
今回始まった公募は、かなり具体的な要件が提示されています。
対象モデル : 国内開発のLLMまたはSLM(小規模言語モデル)
※行政分野特化型も歓迎
必須条件 : 自然言語を扱えること、および ガバメントクラウド上での動作
※画像生成等は対象外
期間 : 2025年12月2日〜2026年1月30日
スケジュールとしては、2026年度中に「源内」上での試験導入と検証を行い、その結果を踏まえて2027年度以降に本格提供が検討されます。特筆すべきは、2026年度中は 「無償提供」 が求められる点ですが、インフラ費用はデジタル庁持ちとなる見込みです。これはベンダー側にとっては、政府利用という巨大な実績を作るための投資フェーズとなるでしょう。
まとめ
今回のデジタル庁この動きは、単なる「お役所のシステム更新」ではありません。日本の生成AI活用における重要なシグナルが含まれています。
これまでは「とりあえず高性能なGPT-5やGemini3を使っておけば良い」という風潮がありましたが、これからは 「汎用的なタスクはグローバルモデル」「機微な業務や専門領域は国産/特化型モデル」 という使い分けがスタンダードになって来る可能性を秘めています。セキュリティ要件の厳しい金融や医療、インフラ業界においても、今回の政府の動きに追随し、国産LLMを採用する動きが加速するかもしれません。
「源内」に最適化された国産モデルが実装されれば、これまでAI化が難しかった申請書類のチェックや法令対応業務の自動化が一気に進むでしょう。 2025年末、デジタル庁が切った「国産回帰」への舵。これが2026年の日本の生成AI市場にどのような変化をもたらすのか、民間企業も注目していく必要があります。
writer:宮﨑 佑太(生成AIアドバイザー)

