ChatGPT「思考時間」を検証!速度と品質の最適点を徹底比較

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ChatGPT「思考時間」を検証!速度と品質の最適点を徹底比較

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本記事を10秒でまとめると

ChatGPTの新機能「思考時間」を徹底検証。応答速度と品質をプラン別に制御可能に。「Deep Research」との関係性や、ビジネスシーンで最適な「思考の深さ」の選び方を、専門的な視点で徹底解説します。

GPT-5 with Thinkingモデルとは

「GPT-5 with Thinking」は、ChatGPTの中でも特に複雑で、深い思考やリサーチを必要とするタスクのために設計された高度なAIエージェントモデルです。これは、単に学習済みの知識から瞬間的に応答するのではなく、与えられた問いに対して複数のステップで内部的なリサーチ、分析、推論、自己評価といった思考プロセスを実行してから、最終的な回答を生成する点が特徴です。

厳密にいうと「行動エージェント(Action Agent)」というよりも「思考エージェント(Reasoning Agent)」や「タスク遂行エージェント(Task-Execution Agent)」と言えるでしょう。

この「考える」というプロセスにより、表面的な回答ではなく、背景や文脈、複数の論点を考慮した、より構造的で深いアウトプットが期待できます。そのため、専門的なレポート作成、戦略立案、複雑な問題解決など、単純なテキスト生成を超えた高度な知的作業を強力にサポートします。

Deep Researchとは?

「Deep Research」は、「GPT-5 with Thinking」モデルの能力をさらに拡張する目的特化型の専用機能です。このモードを有効にすると、ChatGPTは自身の内部知識だけに頼るのではなく、リアルタイムでWebブラウジングを行い、最新かつ多様な情報源から情報を収集・分析します。

これは、通常のチャットモードとは独立した専門的なプロセスです。Deep Researchを開始すると、バックグラウンドで「Webを広範囲に調査し、情報を分析・統合して、出典付きのレポートを生成する」という一連のワークフローが実行されます。そのため、リサーチを開始する前にどのチャットモードを選択していたとしても、Deep Research自体の基本的なプロセスは変わりません。

今回のアップデートとは

2025年9月18日、この「GPT-5 with Thinking」モデルに、思考の深さと応答速度をユーザーが能動的にコントロールできる「思考時間」セレクターが導入されました。

これにより、ユーザーはタスクの重要度や緊急性に応じて、ChatGPTにどれだけ深く考えさせるかを選択できるようになったのです。そして重要なのは、この「思考時間」設定が、Deep Research機能の実行プロセスにも影響を与えるという点です。

  • 利用可能なプランと選択肢:
    • Plus / Business: Standard(応答速度と品質のバランスが取れた新しいデフォルト)、Extended(従来のThinkingモードに相当する、より深い思考)
    • Pro: Light(最速応答)、StandardExtendedHeavy(最も深く時間をかける推論)の4段階
  • 設定の維持: 一度選択した思考時間は、次に変更するまで維持されるため、タスクごとに再設定する手間がなくなりました。

実際にやってみた

この新機能がアウトプットにどのような違いをもたらすのか、AI分野の専門的な質問を投げかけて検証しました。

【質問】 大規模言語モデルにおけるScaling Lawsの概要と、代表的な論文を3つ挙げ、その意義を比較してください

まず、モデルとして「GPT-5with Thinking」を選択します。 

すると、メッセージ入力欄に思考時間を選択する新しいメニューが表示されます。

ここから各モードを切り替えて、同じ質問を繰り返しました。

LLMのScaling Lawsの概要に関する質問と、ChatGPTの回答②
LLMのScaling Lawsの概要に関する質問と、ChatGPTの回答②

さらに、DeepResearchにおいても各モードを試してみました。

LLMのScaling Lawsの概要に関する質問と、ChatGPTの回答③
LLMのScaling Lawsの概要に関する質問と、ChatGPTの回答④

4つの速度とDeep Research時の出力の比較

では各モードの応答時間と出力品質を比較してみましょう。思考時間を伸ばすことは、単に長く待つことではなく、アウトプットの①網羅性、②参照情報の多様性、③実務への具体性が高まることが判明しました。

【思考時間別 アウトプット比較表】

モード応答時間出力構成の特徴内容の深さ・実用性(Scaling Lawsの回答分析)
Light13秒箇条書き中心。結論ファーストで、要点を素早く把握できる構成。【概念の骨子を把握】 主要論文の結論は押さえているが、引用はラベルのみ。アイデアの初期メモや、議論のたたき台となるキーワード出しに最適。
Standard54秒概要→論文3本紹介→比較表→実務指針、と構成が整い、単体で完結するドキュメント形式になる。【実用的な知見を獲得】 実務的な経験則にまで言及。速報記事や社内メルマガ、定例報告のドラフトとして十分通用する品質。
Extended1分24秒論文を時系列で整理し、歴史的文脈と研究の系譜が加わる。【背景と理論を理解】 数式や係数にも言及し、技術的な深みが増す。「なぜそうなったのか」という背景知識が求められる顧客向け資料や技術ブログに耐えうる品質。
Heavy2分44秒背景→論文3本→詳細な実務設計メモ→近年の論争点、と網羅性が非常に高くなる。【戦略レベルの洞察を得る】 総所有コストや推論コストまで踏み込み、具体的なToDoリストに近い形で提示。ビジネス上の意思決定を伴う提案書や社内ホワイトペーパー向けの深い洞察。

【Deep Researchモードと「思考時間」の関係】

Deep Researchは専用の調査プロセスですが、「思考時間」の設定に応じて、そのプロセスに投入されるリソース(計算能力や時間)が変わります。

  • Light / StandardでDeep Research: 調査範囲を主要なものに絞り、分析を早めに切り上げることで、迅速に概要レポートを作成します。
  • Extended / HeavyでDeep Research: より多くの情報源を深く掘り下げ、複雑な関連性を分析し、網羅的で質の高い調査報告書を作成します。

DeepResearchは与えるタスク内容による大きく所要時間は変動しますが、今回は

  • LightでDeep Research:6分
  • StandardでDeep Research:9分
  • ExtendedでDeep Research:10分
  • HeavyでDeep Research:13分

となりました。

料理に例えるなら、Deep Researchというプロセスは「カレーを作るレシピ」で、思考時間は「料理にかけられる時間と予算」です。同じレシピでも、投入するリソースによって完成するカレーの深みが全く異なるのと同じといえます。

まとめ

ChatGPTの「思考時間」セレクターは、生成AI活用の費用対効果をユーザー自身が最適化できる画期的な機能です。

これまでブラックボックスだった生成AIの「考える」というプロセスに、速度と品質のトレードオフという明確な選択肢が与えられました。ビジネスユースにおける「実戦投入ライン」はStandardモードであり、1分程度の投資で十分な品質が得られることが多いでしょう。

しかし、より高い品質や深い洞受けが求められる場面では、数分間の追加投資(ExtendedやHeavy)が、その後の人間の作業時間を大幅に削減してくれる可能性があります。

今後のビジネスでの展望

この機能は、生成AIのビジネス利用をさらに加速させるでしょう。タスクの重要度と緊急度に応じて、最適な「思考時間」を使い分けることが、今後の生成AI活用における新たな常識となるでしょう。

【シーン別・思考時間のおすすめの使い分け】

  • 日々のコミュニケーションやアイデア出し
    • タスク例: Slackでの返信案作成、5つのブログタイトル案出し、会議のアイスブレイクネタ探し
    • 推奨モード: Light 
  • 定型的なドキュメント作成
    • タスク例: 週次報告レポートのドラフト作成、顧客への定型メールの作成
    • 推奨モード: Standard
  • 少し込み入った分析や顧客向け資料
    • タスク例: 競合製品の機能比較表の作成、顧客向け提案書の構成案作成
    • 推奨モード: Extended 
  • 経営判断に関わる重要なレポートや調査
    • タスク例: 新規事業の市場調査レポート、M&A候補企業のデューデリジェンス資料の一次調査
    • 推奨モード: Heavy + Deep Research

生成AIが単なる「答えを出す機械」から、思考の深さまでコントロールできる「知的リソース」へと変わりました。この新機能を使いこなすことが、今後のビジネスにおける競争優位性を左右する重要なスキルとなるでしょう。まさに生成AIを意図せず使うか、使いこなしているかの違いになるかも知れません。


writer:宮﨑 佑太(生成AIアドバイザー)

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