2026年12月29日|発行:サンデーAI編集部
今週の生成AI NEWS
- Dify「v1.11.2」リリース(GitHub Releases)
- OpenAI「Unauthorized OpenAI Equity Transactions」公開
- Google「Google for Education と AI:2025年の振り返りと学びの深化」公開
今週は、年末ということもありいわゆる「大型のモデル発表」よりも、運用・ガバナンス・現場導入を支える土台のアップデートが目立ちました。プロダクト側ではDifyの安定化とセキュリティ改善、企業側ではOpenAIが未承認持分取引への注意喚起を明文化。教育領域では、Googleが2025年の実践と思想をまとめ、導入の“語り方”を整理しています。
今週のAIニュースダイジェスト( 3 件)
Dify「v1.11.2」リリース(GitHub Releases)
Difyがv1.11.2を公開。新機能としてInterSystems IRIS Vector Database対応、Aliyun SLS(ログ)連携などが追加されました。
加えて、Mermaidグラフ周りのXSS対策、SSRF/CSVインジェクション対策など、セキュリティ修正も含まれています。
ここがミソ!: 社内導入や顧客提供でDifyを使っている場合、今回の更新は「新機能」以上に「運用事故の芽を摘むアップデート」です。特に可視化(Mermaid)や外部HTTP、CSV出力を使っている構成は、優先的にバージョン差分の影響確認と更新を推奨します。
OpenAI「Unauthorized OpenAI Equity Transactions」公開
OpenAIが、同社株式(持分)の移転制限と、OpenAIの書面同意なしに行われる移転が無効となり得ることを明記。
SPVを通じた“間接的なエクスポージャー”、トークン化持分、フォワード契約などを含む未承認の取引機会に注意喚起し、同社として制限を厳格に執行する方針を示しました。
ここがミソ!: プロダクトのアップデートではない一方で、生成AI業界の成熟に伴い「技術」だけでなく「資本・ガバナンス」も一次情報として押さえる重要性が増しています。企業側は、AIベンダーを巡る投資・SPV勧誘・提携話が出た際に、一次情報で真正性を確認する運用が必須になりつつあります。
Google「Google for Education と AI:2025年の振り返りと学びの深化」公開
Google for Educationが、2025年に150以上の新機能・アップデートを発表したこと、教育における根底の信念として「学びの核は人間同士のつながりであり、生成AIはそれを置き換えるのではなく強化する」という立場を明記。
学習科学に基づいた設計や、学習の専門家とのパートナーシップにも言及しています。
ここがミソ!: 教育現場の生成AIは「便利さ」の競争から、「人の学びをどう支えるか(設計思想+運用)」の競争に入っています。企業研修や人材開発でも同じで、生成AIは“置換”ではなく“学習と実務の接続を強化する補助線”として語れるかが、導入を前に進める鍵になります。
注目トピック解説
トピック:Google for Educationが示した「AI導入の語り方」

率直に言うと、これは“新機能まとめ”というより、生成AIを教育に入れるときに必ず揉める論点を、先に言語化して整理しにきた文章でした。これは決して教育現場だけに閉じた藩士ではありません。
核になっているのは、「学びの中心はテクノロジーではなく、人間同士のつながりにある。生成AIはそれを置き換えるのではなく強化する」という立場です。
この一文を出してきた時点で、Googleがどこに勝ち筋を置いているかが透けます。つまり、今後は技術競争ではなく、導入時の合意形成(説明責任)の競争であることを主張しています。
実際、教育現場で生成AIが止まりやすいポイントは「便利かどうか」ではなく、「怖さの正体が人によって違う」ことです。先生は学習の主体性や評価の公平性を気にする。保護者は依存や不適切生成を気にする。管理職・自治体は事故時の責任や説明を気にする。ここが噛み合わないまま機能だけを配っても、だいたい失速します。
だからこそ、今回のように“思想=前提”を先に置いておくのは、導入の速度を上げるための実務的な手当てに見えます。そして何よりこれは教育現場に限らずステークホルダーの多いどんなシチュエーションにも当てはまるのではないでしょうか。
今回の記事で印象的なのは、思想だけで終わらせず、「今年は150以上の新機能・アップデートを発表した」という事実とセットで“地に足のついた振り返り”にしている点です。つまり、「理想論を言っているだけではなく、2025年は実装としてここまでやった」という文脈を、導入側が説明に使える形で整えています。
さらに踏み込むと、英語版のYear in Reviewの案内では、現場の運用に刺さる具体がいくつも出ています。たとえば、課題に学習標準(standards)やスキルをタグ付けし、その進捗を学習目標の分析として追えるようにする、といった“評価と学習設計の接続”に近い話。
あるいは、Read Along(音読系)体験の中でGeminiを使って、学習者ごとに段階差のある読解アクティビティを作る、といった“個別最適化の具体”。ここは「生成AIで宿題を自動化」みたいな雑な話ではなく、授業設計の中に生成AIを埋め込む方向のアップデートとして読み取れます。
そして、2025年を特徴づけるもう一つの軸が「AIリテラシー」です。Year in Reviewでは、教育機関・教員・学生向けのAIリテラシー支援を拡充したことが明記されており、たとえば“無料のトレーニング”で100万人以上が受講し、10万人以上がGemini認定を取得した、という数字も出ています。
さらに、すぐ使えるプロンプト集や「Geminiの教育活用100+」のような実践ガイド、AI Quests(中学生向けのゲームベース/コード不要でAIのライフサイクルを体験する学習コンテンツ)など、教材としての手当ても押さえに来ています。ここは、2026年以降に本格導入が進むほど効いてくる領域です。なぜなら、ツール配布よりも「どう教えるか/どう判断するか」を支える素材が不足しがちだからです。
年末にこの整理が出てきたこと自体が、来年の勝負どころを示していると読めます。2026年は、プロダクトの比較表を作るより先に、「組織として何を守るか」を明文化できるかが問われるかもしれません。
教育なら、学びの主体性、評価の妥当性、教員の役割、児童生徒の安全。企業なら、判断の責任、ナレッジの扱い、情報セキュリティ、コンプラ、現場運用。この“守るもの”を先に置いた上で、「生成AIは補助線としてどこに入れるか」を決める。Googleがやっているのは、まさにこの導入の順番を示すことでした。
もう一点、地味ですが実務に効くのが、アナウンスの“但し書き”まで含めて書かれているところです。Year in Reviewの案内には、たとえばGoogle Vidsの生成AI機能について、Education Plus等のライセンス条件や、年齢制限(18歳以上)、言語(英語)などの前提が脚注で明記されています。
導入現場で揉めやすいのは、こういう「どのユーザーが、いつ、何を使えるか」が曖昧なまま期待値だけが膨らむことなので、一次情報の段階で条件を書き切るのは、運用の観点ではかなり助かります。
まとめると、今週のこのトピックは「教育×生成AIの未来」ではなく、「生成AI導入を前に進めるための説明責任のテンプレ」に近いです。教育の言葉で書かれているのに、企業の人材開発・研修・現場展開にも転用できる。生成AIに関わる全ての人が年末に読む価値がある資料と言えるでしょう。
「今年は「生成AIを使えるか」から「生成AIを使って何を行うか/守るか」に論点が移った一年でした。Google for Educationの文章は、まさにその整理を先にやっています。教育向けの話に見えて、企業の人材育成や現場展開でも、そのまま通用する“導入の型”と言えるでしょう。また、まだこの領域に到達していない企業は強く危機感を持つ必要があります。」
「生成AIの導入が止まる原因の多くは、機能不足ではなく合意不足であろう。現場、法務、情報システム、経営がそれぞれ別の不安を抱えている。だからこそ「生成AIは置換ではなく強化」という前提を明文化し、線引きを作らなければならない。多くの日本人は変化を嫌い意味のない批判で停滞をケースが多いからこそ2026年はプロダクト選定より、この作業に時間を割けるかどうかで組織の価値が問われるに違いない。」
「ニュースとしては地味に見えますが、こういう“語り方の整備”が一番効きます。Difyの更新が運用・堅牢化寄りで出てきているのも同じ流れで、PoCから本番へ進むほど、最後に必要になるのは機能よりもルールと説明です。年末は来年の導入設計を一度言語化するのに使ってみてはいかがでしょうか?」

