サンデーAI_2025.07.14｜教育を変える生成AIと動画革命
2025 年 7 月 14 日｜発行：サンデーAI編集部
今週の生成AI NEWS
・OpenAI が AI 搭載 Web ブラウザを準備──チャット UI＋履歴学習で“検索後クリック”を代替
・Windows 11 Insider、画像説明「Click‑to‑Do Describe Image」など新機能 6 件を追加
・Google Classroom、Gemini 機能を教職員・学生に無償開放──教材生成・自動採点を恒久無料化
・Google Veo 3 が画像→動画生成に対応、透かし機能を強化してコンプライアンスを両立
・Meta、「Superintelligence Labs」設立し Llama 4 ロードマップを初公開
今週は、教育・クリエイティブ・OS・ブラウザ――生活インフラの“表層”に AI が溶け込み始めた一週間 だった。Google は Classroom で Gemini を恒久無料化し、公教育の AI デジタルディバイド是正を狙う。OpenAI は検索 UX そのものをブラウザーで巻き取りにかかり、Microsoft はオンデバイス推論でアクセシビリティを強化。
映像分野では Veo 3 が Image‑to‑Video 機能を追加し、SNS・広告で“秒生成”が実用段階へ。さらに Meta は“超知能”研究所を設立し GPU 調達競争に名乗りを上げるなど、インフラとユーザー体験の両面で AI 戦線が拡大した。
今週のAIニュースダイジェスト（5件）
OpenAI、AI 搭載 Web ブラウザを準備
Reuters 独占。チャット UI で質問するとブラウザが自律的に巡回し、要約・比較・購入手続きまで実行。履歴データはローカル暗号化学習し、プライバシー保護をPR。年内ベータ提供予定で、Chrome 拡張版とスタンドアロン版を同時展開。
ここがミソ！: “検索→クリック→比較”の 25 年続いた UX そのものを AI が代替。広告と SEO の根幹を揺るがし、AI ブラウザ最適化（ABO） という新業種が早くも立ち上がっている。
Windows 11「Click‑to‑Do Describe Image」など 6 機能
Insider Dev/Beta ビルドで、画面上の任意画像をローカル NPU で説明する機能を追加。
ほかに Voice Shortcuts、Settings で AI ストレージ診断、省電力プロファイルの自動調整などを実装。Azure Compute とのクラウド補完も可能。
ここがミソ！: オンデバイス AI が“クラウド＝高コスト”の常識を覆し始めた。PC ベンダーは専用 NPU と冷却設計を新たな差別化軸に据える。
Google Classroom、Gemini 機能を教職員・学生に無償開放
教員アカウント向け 30 種を超える AI ツール（教材自動生成、宿題添削、段階質問フィードバック等）を恒久無料化。
学生向けには NotebookLM 内蔵の“リサーチコーチ”を順次解放。2026 年度までに 1 億 2,000 万学習者を対象にすると宣言。
ここがミソ！: “AI が黒板の隣に常駐” することで、Ed‑Tech の主戦場は LMS からプラットフォーム内蔵 AI へ移行。地方公立校でも生成 AI が日常化し、教員の役割が「評価者＋コーチ」へシフトする。
Google Veo 3、画像→動画生成と透かし強化
静止画を読み込み、カメラワーク・トランジションを自動設計し 1080p/30fps・最長 45 秒の動画を生成。新しいウォーターマークはフレーム毎に不可視 ID を埋め込み、ディープフェイク検出 API と連携。
ここがミソ！: 制作サイクルが日単位→分単位 へ。広告代理店は A/B テストを 1 日に 100 パターン走らせる事例も。ウォーターマーク標準化は“生成物の真贋証明”プラットフォームを生む布石。
Meta、Superintelligence Labs 設立
GPU 120 万基規模のデータセンター増設を含む 250 億 USD を投資し、2026 年上期に Llama 4（1.8T パラメータ）をリリースするロードマップを発表。H100 次世代版を優先確保し、独自 AI ファブレスチップ「Artemis」開発も公表。
ここがミソ！: “超知能”競争が資本と電力の奪い合いフェーズに。中堅 AI 企業は GPU 調達が困難になり、クラウド GPU レンタル単価が 30 % 上昇 と予測される。
注目トピック解説
注目トピック 1：Classroom×Gemini――「AI が当たり前の教室」元年
公教育における生成 AI の本格実装がついに始まった。
Google Classroom に無償で統合された Gemini は、①単元目標を入力するだけで 学習指導要領に準拠した教材と小テスト を生成し、②提出物を文系・理系問わず自動採点、③誤答傾向を分析し “段階質問” を用いた個別ヒント動画を生成する。
Google は試行自治体で「教員の準備時間を週 9.2 時間、平均 41 % 削減」と報告したうえで、Classroom アナリティクスに“AI 作成教材の学習到達度差分”ダッシュボードを開発中だという。
裏では ChromeOS／Workspace for Education のライセンスを増やし、教材テンプレを共有する 「Gemini Lesson Hub」 でプラットフォームロックインを図る戦略が透ける。
Ed‑Tech ベンダーにとっては既存 LMS の価値を再定義する岐路であり、“縦割り教科特化 AI”や“学校独自データで Fine‑tune したミニモデル”などニッチ勝負が必須になる。同時に、生成 AI の偏り・誤情報がそのまま教材化されるリスク も顕在化する。東京都教委は「Gemini 提示情報のファクトチェックを学校図書館司書が担う」試験運用を開始。
これは“生成 AI のセカンドオピニオン係”として図書館が復権するユニークな実例だ。全国的には教職員の AI リテラシー格差が最大の課題であり、2026 年度採用試験では “生成 AI 活用実技” を追加する自治体も検討している。
「教員は“Gemini が作った教材をどうアレンジするか”に創造性を振り向けるフェーズに突入した。まずは 1 単元を丸ごと AI 生成に置き換え、学習到達度と準備時間を Google アナリティクスで可視化しよう。数字で示せば PTA・教育委員会の合意形成が一気に進む。」
「公教育が無償 AI を取得すると、家庭学習との“環境格差”が是正される一方、プラットフォームへの依存度が劇的に高まる。10 年後、教科書会社ではなく GAFA が教育カリキュラムを実質管理する構図も十分起こり得る。政府・地方自治体は『AI 教材の国産バックアッププラン』を真剣に考えるべき時期に来ている。」
注目トピック 2：Veo 3 が切り拓く“画像→動画”の表現革命
Veo 3 の Image‑to‑Video は単なる“動くスライドショー”ではない。
被写体を深度推定し、バーチャルカメラでパン・ズーム・ドリー撮影を自動設計するため、写真 1 枚からミニ CM のような映像が生成できる。広告代理店 Ogilvy はこの機能を使い、EC 商品ページの静止画像を 6 秒動画に変換、クリック率が平均 38 % 向上したと公表した。
透かし強化はフレーム単位でハッシュ化された不可視 ID を入れ込み、Google Cloud Vision API で真贋判定を 0.3 秒以内に返す仕組み。これは生成動画の「出所証明」と「コンテンツ-ID 広告配分」システムを同時に成立させる狙いであり、“AI 動画の YouTube コンテンツ ID 版” を想起させる。
制作ワークフローにも大きな地殻変動が起きる。従来は①ディレクターがストーリーボードを作成→②スタジオで撮影→③編集が 3 日以上、だった工程が “PM が写真をアップ＋プロンプト送信→数分後チェック→30 分で複数案比較” に短縮される。
結果、ハイエンド制作会社は“プロンプトディレクター”と“ブランド AI ガイドライン策定”へ業務が上流移行。逆にコンテンツのコモディティ化で 「安かろう悪かろう AI 動画」の市場淘汰 も始まる。
勝ち残る鍵は、AI が自動生成できないブランド世界観・ストーリーテリングの一貫性 にほかならない。
「秒で動画が量産できる時代こそ“出せば当たる”幻想を捨てるべき。ブランドは『ウチの AI 動画は 3 つのトーン＆マナーを守る』というガイドラインを先に定義し、生成パラメータを固定化せよ。ガイドラインなしに走るとタイムラインが“安手の AI CM”で溢れ炎上するだけだ。」
関連タグ: 【AI ブラウザ】【オンデバイスAI】【教育×生成AI】【Image‑to‑Video】【超知能DC投資】
