サンデーAI_2025.06.16|AppleとGensparkが拓く生成AI新時代
2025年6月16日|発行:サンデーAI編集部
今週の生成AI NEWS
・GensparkがAIブラウザ正式リリース
・Apple、開発者にAIモデルAPIを開放
・インド発Kruti:国産AIエージェント登場
・Google DeepMind、動画生成AIモデルを刷新
・生成AI由来のサイバー攻撃が急増
今週は、Apple・Gensparkによる「生活へのAI浸透」が大きな話題に。あわせて、インド・欧州発の動き、そして生成AIの脅威側面も浮かび上がる一週間でした。
今週のAIニュースダイジェスト(5件)
Genspark、AIブラウザを正式公開
AIブラウザ「Genspark」がmacOS向けにリリース。
AIがページ構造を把握し、レビュー要約・価格比較・リンク自動遷移などを実行。音声指示でのホテル・レストラン予約を行う「Super Agent」も搭載し、実生活レベルでの“AIナビゲート”が実現された。
(出典:Genspark公式)
ここがミソ!
“調べるためにAIを使う”ではなく、“AIを通してWebを使う”UXが実装段階に。ユーザーの起点がAIになることで、「検索後のクリック」時代が終わる可能性すらある。
Apple、開発者向けにAIモデルAPIを開放
WWDC2025にてAppleは「Apple Intelligence」の開発者向けAPIを正式発表。
自社独自のFoundationモデル群にアクセス可能となり、オンデバイスでのテキスト生成や要約、音声制御といったAI機能をアプリに統合できる。すべての通信はエンドツーエンドで暗号化され、iCloud Private Computeと連携。
(出典:WWDC2025)
ここがミソ!
“アプリにAIを追加”するのではなく“AIを起点にアプリがつながる”。Appleが提供するのは機能ではなく、“設計思想そのもの”と言える。
Krutrim、「Kruti」発表──インド発エージェントAI
インドAIスタートアップKrutrimは、対話型AIエージェント「Kruti」を発表。
ヒンディー語・英語のバイリンガル対応で、天気・交通・予約・音声チャットなどの機能を提供。スマートフォンOSへの統合も計画されている。
(出典:The Economic Times)
ここがミソ!
13億人市場に“インド語話者向けAI”を提供できるプレイヤーは少なく、Krutiはその先駆けに。生成AIのグローバル化における“言語別覇権”が加速する。
Google DeepMind、動画生成AI「Veo」刷新
Google DeepMindは動画生成モデル「Veo」を発表。
1080p解像度/1分超の連続生成が可能で、時間軸の整合性やカメラワーク制御、音声との同期が強化された。テキストからだけでなく、静止画や短動画からの補間生成も可能。
(出典:DeepMind公式ブログ)
ここがミソ!
動画生成AIはSNSコンテンツや教育、プロトタイピング領域での活用が進行中。OpenAIのSoraとの違いは、“視点”と“編集自由度”にある。
生成AI由来のサイバー攻撃、急増中
世界各国のサイバーセキュリティ機関が、生成AIを用いた攻撃技術の高度化を警告。
偽装メール・フィッシングだけでなく、コード生成を悪用したマルウェアの自動開発、さらには音声・映像Deepfakeによる“なりすまし”犯罪が拡大している。
(出典:米CISAほか)
ここがミソ!
「誰でも使えるAI」が「誰でも攻撃できるAI」にもなり得る。セキュリティ部門では「プロンプト設計の監査」や「生成物の水印義務」など、新たな管理概念が模索されている。
注目トピック解説
注目トピック1:GensparkのAIブラウザが示す「ポスト検索」時代の到来

Gensparkの本質は“AIによるWeb利用の最短化”です。
ユーザーが「ホテルを探したい」と言えば、AIが候補を選び、価格とレビューを比較し、予約まで実行する。“検索→クリック→比較→遷移”という手間が一気に消え去る。
Super Agentとの組み合わせで、「AIが代わりに操作してくれる」日常がいよいよ現実に。AIがブラウザを通じて生活インフラとなる時代が始まりました。
専門家の見解
「Gensparkは“使うAI”ではなく“任せるAI”です。従来の生成AI活用が“文脈を与えて答えさせる”ものだったのに対し、これは“目的を伝えて手続きを丸ごと委任する”というまさにエージェント構造。ユーザーは目的設定に集中できるようになります。過去にもOpenAI社が”Operator”を発表していますが、速度や精度が問題でした。このGenspark AIブラウザはまさにOperatorを超えた体験ができるエージェントといえるでしょう。」
「検索の時代は“探す楽しみ”もあったが、今は“探す時間のなさ”が勝る。Gensparkは“行き先が決まっていて、道案内はAIに任せる”世界を定着させる第一歩です。今後は生成AIを使っているかではなく、どれだけエージェントに任せているかが差となるといえます。」
注目トピック2:Apple Intelligenceが提示する「AIの再定義」

Appleが示したのは、単なるAI機能ではなくAIの使われ方そのものの再設計です。
特に注目すべきは以下の3点:
- Siriの文脈理解と音声操作強化
- 各アプリへの“自然言語オーバーレイUI”実装
- 開発者への“セキュアAI API”開放とオンデバイス処理の徹底
Appleは、AIを“製品”としてではなく“文化や生活スタイルを変える要素”として位置づけています。
Apple Intelligenceは、最も“見えにくいけれど生活に深く溶け込むAI”となる可能性があります。
専門家の見解
「Apple製品そのものは目新しい情報もなく、OSの発表も寂しいものだったが、生成AI関連では爪痕を残したと言える。AppleはAIの技術ではなく“接し方”にフォーカスしている。GoogleやOpenAIが“思考を助けるAI”を目指すのに対し、Appleは“自然に暮らす中にAIがいる”世界をデザインしていると感じる。UXの極みだろう。」
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