生成AIをよく使う人ほど「外向的で活発」──NTTドコモ調査が明かす性格特性

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本記事を10秒でまとめると

NTTドコモ モバイル社会研究所の調査で、生成AIの利用頻度が高い人ほど「外向的で活発」「新しもの好き」である傾向が判明。一方、生成AIに不安を感じる人は「心配性」の傾向があり、特に若年層でその傾向が顕著。

生成AIは単なる便利ツールではなく、利用者の性格特性と深く結びついた「コミュニケーションツール」として機能している可能性が浮き彫りに。


なぜ今このテーマが注目されるのか

「ChatGPTは内向的な人が一人で使うツール」──そんなイメージを持っている方もいるのではないでしょうか?

2025年12月1日、NTTドコモのモバイル社会研究所が発表した調査結果は、この常識を覆すものでした。全国15~69歳の7,527人を対象にした大規模調査で明らかになったのは、生成AIをよく使う人ほど「外向的で活発」であり、「新しいことが好き」という性格特性を持つという意外な事実です。*1

ChatGPTやGeminiといった生成AIが登場して約2年。利用者は世界で7億人を超え、日本でも認知率は50%を超えています*2。しかし、「どんな人が、なぜ生成AIを使うのか」という利用者の性格特性に焦点を当てた大規模調査は、これまでほとんどありませんでした。

今回の調査が注目される理由は3つあります。

第一に、生成AIは単なる「便利な検索ツール」ではなく、利用者の性格特性と深く結びついた「コミュニケーションツール」である可能性が示されたこと。

第二に、若年層が生成AIに対して「期待と不安」という矛盾した感情を抱いている背景が明らかになったこと。

そして第三に、企業が生成AI導入を進める際、「誰に、どう使わせるか」という人材配置の戦略に新たな視点を提供する可能性があることです。

この記事では、調査結果の詳細を分析し、ビジネスパーソンが知っておくべき「生成AI時代の人材マネジメント」について考察します。


 発見1: 生成AIをよく使う人ほど「外向的で活発」

調査では、「『活発で、外向的だと思う』ということが、あなた自身にどれくらいあてはまるか」という質問と、生成AIの利用頻度(プライベート利用)との関係を分析しました。

【生成AIの利用頻度と外向的な性格との関係】

出典: モバイル社会研究所「2025年 生成AI利用意識・行動調査」

結果は明確でした。生成AIを「ほぼ毎日」利用する人のうち、「活発で外向的」だと答えた人の割合は、「利用したことがない」人と比べて約1.5倍高かったのです。

この結果は、多くの人が抱く「生成AI=内向的な人が一人で使うツール」というイメージと真逆です。研究所は「外向的な人は、人との交流の中で生成AIを積極的に活用している」と分析しています。

なぜ外向的な人が生成AIを使うのか?

この背景には、生成AIの利用シーンの変化があります。OpenAIが2025年に発表した「How People Use ChatGPT」レポートでは、ChatGPTの利用用途が「仕事での情報検索」(28%)よりも「暮らしの中での実践的な助言」(72%)が主流になっていることが明らかになりました。

つまり、生成AIは「一人で黙々と作業する道具」ではなく、「人と話す前の準備」「会議での提案作成」「SNSでの発信内容の検討」といった、対人コミュニケーションを円滑にするためのツールとして使われている場合が多いためです。

外向的な人ほど、こうした「人との交流を前提とした利用シーン」で生成AIの価値を見出し、積極的に活用しているのでしょう。

※参照:OpenAI & Apollo Research「Detecting and reducing scheming in AI models」(2025年)
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発見2: 生成AIをよく使う人ほど「新しもの好き」

次に、「『新しいことが好きで、変わった考えをもつと思う』ということが、あなた自身にどれくらいあてはまるか」という質問と、生成AIの利用頻度との関係が分析されました。

【生成AIの利用頻度と好奇心の高さとの関係】

出典: モバイル社会研究所「2025年 生成AI利用意識・行動調査」

結果、生成AIを「ほぼ毎日」利用する人のうち、「新しいことが好きで、変わった考えを持つ」と答えた人の割合は、「利用したことがない」人の約2倍に達しました。

研究所は「好奇心の強さにより、新しい技術を積極的に活用している」と分析しています。

イノベーター理論との一致

この結果は、マーケティングにおける「イノベーター理論」とも一致します。新技術の普及には、まず「イノベーター(革新者)」や「アーリーアダプター(初期採用者)」と呼ばれる、新しいものに敏感な層が先行して採用し、その後に大衆へ広がるというプロセスがあります。

生成AIの利用が進んでいる層は、まさにこの「イノベーター」や「アーリーアダプター」に該当し、「新しい技術を試すこと自体に価値を見出す」性格特性を持っているのです。

しかし、ここで重要なのは、「新しもの好き」だけでは生成AIの継続利用には結びつかないという点です。前述の「外向的で活発」という特性と組み合わさることで、「新しい技術を、実際の人間関係やビジネスシーンで活用する」という行動に結びついていると考えられます。

発見3: 生成AIに不安を感じる人は「心配性」──若年層ほど顕著

一方、生成AIに対して「不安を感じている」人の性格特性も分析されました。

「『心配性で、うろたえやすいと思う』ということが、あなた自身にどれくらいあてはまるか」という質問と、生成AIに対する不安度との関係を確認したところ、生成AIに不安を感じる人ほど、心配性である傾向が明らかになりました。

【生成AIに不安を感じる度合いと心配症との関係】

出典: モバイル社会研究所「2025年 生成AI利用意識・行動調査」

さらに興味深いのは、性年代別の傾向です。心配性である人の割合は、若年層ほど高い傾向が見られました。

【心配性についての性年代別の傾向】

出典: モバイル社会研究所「2025年 生成AI利用意識・行動調査」

研究所は「若年層は生成AIに対して期待が高い一方で不安も高い傾向があり、その背景として心配性の方の割合が高いことも要因の一つ」と指摘しています。

若年層の「期待と不安」の矛盾

この結果は、一見矛盾しているように見えます。若年層はデジタルネイティブであり、新しい技術に抵抗が少ないはずです。しかし実際には、生成AIを最も使いこなしている世代が、同時に最も不安を感じているのです。

この背景には、若年層が生成AIの「リスク」をより現実的に理解していることがあります。たとえば、生成AIによる誤情報の拡散、プライバシーの侵害、仕事の代替による雇用不安といったリスクは、若年層にとって「将来の自分に直接影響する問題」です。

OpenAIとApollo Researchが2025年に発表した「Detecting and reducing scheming in AI models」では、最先端の生成AIが「スキーミング(隠れたズル)」を行う可能性が指摘されました。若年層は、こうした生成AIの「信頼性の問題」に敏感であり、「便利だけど、本当に信頼していいのか?」という葛藤を抱えていると考えられます。

※参照:OpenAI & Apollo Research「Detecting and reducing scheming in AI models」(2025年)
 過去記事「生成AIもズルをする? スキーミングのリスクと軽減法!」

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ビジネスへの示唆: 生成AI活用は「性格特性」に合わせた人材配置がカギ

今回の調査結果は、企業の生成AI導入戦略に重要な示唆を与えます。

示唆1: 「外向的で新しもの好き」な人材を生成AI活用の推進役に

生成AIを全社導入したが、全く活用が進んでいないという企業も少なくありません。生成AIの社内導入を成功させるには、「外向的で、新しいことが好き」な人材を、まず最初の推進役に据えることが有効です。こうした人材は、生成AIを積極的に試し、その活用法を他のメンバーに広める「社内インフルエンサー」として機能します。特に、営業職やマーケティング職など、対人コミュニケーションが多い部署では、外向的な性格特性を持つ人材が生成AIの価値を最も実感しやすいでしょう。

一方、米国では「AI実装を担うエンジニアに時給900ドル(約13万円)」という高額報酬が提示されるなど、実装を前進させる人材への投資が進んでいます。日本企業も、単なる「導入検討」から「実装と活用促進」へシフトし、推進役となる人材を明確に定義し、育成・配置することが求められます。

※参照:MIT Sloan / Stanford AI Index Report 2024
 過去記事「広がる生成AI導入格差 —— 実装で進む米国と検討止まりの日本」参照

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示唆2: 「心配性」な人材の不安に寄り添う安全設計を

一方、生成AIに不安を感じる「心配性」な人材を無視してはいけません。彼らの不安は、生成AIのリスクを冷静に見抜く「リスク感覚」でもあります。

企業は、こうした人材の声に耳を傾け、ペアレンタルコントロールのような「安全な利用設計」を導入すべきです。OpenAIが2025年9月に発表したペアレンタルコントロール機能は、「監視ではなく、安全設計」を重視しており、家庭だけでなく企業の生成AI導入においても参考になるアプローチです。

※参照:過去記事「ChatGPTに『ペアレンタルコントロール』登場──生成AIを活用した子育てとは」

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たとえば、センシティブ情報の漏洩を防ぐフィルター、生成AIの出力を人間がレビューする仕組み、利用ログの透明化といった施策により、「心配性」な人材も安心して生成AIを使える環境を整えることができます。

示唆3: 日米の生成AI導入格差を埋めるために

日本企業の多くは、生成AI導入が「検討段階」にとどまっており、米国との格差が拡大しています。この背景には、「誰に、どう使わせるか」という人材戦略の不在があります。

米国では、スタンフォード大学のAI Index Report 2024によると、2023年の民間AI投資額は約672億ドル(約10兆円)に達し、中国の約8倍です。これは単なる資金投入ではなく、「実装を担う人材」への明確な投資を意味します。

日本企業が米国に追いつくには、「性格特性に合わせた生成AI活用の人材配置」という新しい視点が必要です。外向的で新しもの好きな人材を推進役に、心配性な人材をリスク管理役に据え、両者の強みを活かした組織設計を行うことで、生成AI導入の成功確率を高めることができるでしょう。


まとめ

NTTドコモの調査が明らかにしたのは、生成AIが単なる「便利ツール」ではなく、利用者の性格特性と深く結びついた「コミュニケーションツール」であるという事実です。

外向的で新しもの好きな人は、人との交流を円滑にするために生成AIを活用し、心配性な人は、生成AIのリスクを冷静に見抜く感覚を持っています。どちらの性格特性も、生成AI時代において重要な役割を果たします。

企業がこの「性格特性と生成AI利用の関係」を理解し、適切な人材配置と安全設計を行うことで、日本の生成AI活用は大きく前進するでしょう。

また、生成AIを活用する上で重要なスキルが「コミュニケーション能力」であることもこの調査から推測されます。自然言語で指示するからこそ、ビジネスパーソンに限らず全ての人々が生成AI時代で活躍するためには人とのコミュニケーションを大切にして鍛えていく必要があります。

あなたの組織には、生成AIを推進する「外向的な人材」と、リスクを管理する「心配性な人材」がバランスよく配置されていますか? その答えが、生成AI時代の成否を分けるかもしれません。

writer:宮﨑 佑太(生成AIアドバイザー)


※1 NTTドコモ モバイル社会研究所「2025年 生成AI利用意識・行動調査」(2025年12月1日)
https://www.moba-ken.jp/project/lifestyle/20251201.html

※2 NTTドコモ モバイル社会研究所「生成AIが『どのようなものか知らない』人は約半数」(2025年4月14日)
https://www.moba-ken.jp/project/lifestyle/20250414.html

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この記事を書いた人

生成AI・教育コンサルタント
株式会社NEDLAB 代表取締役
株式会社SAKI COO
青楓館高等学院 Probono Menter

学校法人河合塾や株式会社リクルートで新規事業開発に携わった後に起業。教育・HRコンサルティングと事業開発支援事業を手掛ける。2023年からは生成AIを活用した事業開発・導入・運用支援事業を開始し、EdTech・HRTech企業や地方自治体を中心に数十社の支援も行う。現在、複数社でDX顧問・生成AIアドバイザーを務める。

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