自称インフルエンサー/AIコンサルに騙されてませんか?生成AI時代に本当に必要な人材の見極め方

  • URLをコピーしました!
目次

本記事を10秒でまとめると

生成AIを推進する人、新規事業企画者必見の自称生成AIプロの薄っぺらい人材を暴く方法や、企業にとって真に必要な人材に必要なスキルを紹介。

生成AIを利用する人に騙されないために

生成AIの登場により、ビジネスのあり方は着実にかつ大きく変化しています。「生成AIに仕事を奪われる」と不安を感じる方もいるかもしれません。ですが、生成AIはあくまでツールであり、その力を最大化し、ビジネス成果に結びつけるのはこれからも「人間」です。

しかし、巷には「生成AI専門家」「生成AI系インフルエンサー/Youtuber」が溢れ、誰が本当に企業に価値をもたらせるのかが見えにくくなっています。

本記事では、企業で本当に重宝される人材を5つのタイプに分類し、「中身のない薄っぺらい人材」を見抜くための具体的な質問集を公開します。推進者を採用したい方、研修やコンサル導入を検討している方は必読です。

また、これから生成AI時代で仕事をしていく学生の方々も必見です。

 企業で重宝される5つの人材タイプ

生成AI活用を成功させるには、単に「生成AIが使える」だけでなく、「技術の本質」「ビジネスへの適用」「組織への浸透」という多角的な能力が必要です。

それぞれどのようなタイプがあり、そのタイプを装うNG人材についても順に紹介していきます。

タイプA:生成AIを使える人

例えば、以下のような使い方しかしていない人を「生成AIを使える人」と呼びますでしょうか?

これは、私の娘のChatGPTの過去ログであり、ビジネスにおいて「生成AIを使っている」≠「生成AIを使える人」ではないことは明らかでしょう。極端な例をあげましたが、新卒の学生が言いそうな「生成AIを使える」状況がこの程度である可能性は決して低くありません。

企業において「生成AIを使える」とは日常業務の効率化や生成AIをパートナーにして業務改善を行えることが最低限の利用法のはずです。

従って、理想的な「生成AIを使える人」とは

自身 / 組織の業務を理解・分析し、生成AIと人間の役割を切り分け、思考の整理ツール / 相談相手として使える人

ではないでしょうか。巷に溢れる 「良いプロンプト集」を盲信しコピペして使っている人では決してないはずです。

タイプB-1:生成AIに詳しい人 (ビジネス領域)

「生成AIに詳しい」と言ってもビジネスで利活用する上で詳しい人アカデミック領域で詳しい人に分類できます。(もちろん双方を満たす人材もごく稀にいらっしゃいます)

まずはビジネス領域において”詳しさが活きる”のはモデルやツール等の技術選定ができ、リスクを考慮したロードマップやガイドラインを作成できることが最低ラインではないでしょうか?一方で実は生成AI系インフルエンサーやYouTuber含め自称生成AIに詳しい人の大半が「ニュースを読んだだけミーハー」つまりサービス/モデル名は知っているだけ、もしくは少し利用したことがあるだけであることが少なくありません。


大切なのは、結局どのモデル / ツールを中長期的にみて選定するか、デメリットは何かであり、表層の知識で終わっている場合企業導入時の具体的な課題や費用対効果を説明できず、「まず入れてみましょう」で終わってしまい、現場に混乱をもたらすだけになってしまいます。

できることだけでなく、技術の「制約」を理解し、それを乗り越えるための具体的な「ビジネス上の工夫」(費用対効果、部門間の連携など)を提案できて初めて「生成AIに詳しい人」と言えるのではないでしょうか。

タイプB-2:生成AIに詳しい人 (アカデミック領域)

次に、そもそもタイプB-1:生成AIに詳しい人(ビジネス領域)と比べると少人数ですが、アカデミック領域における生成AIに詳しい人においても、紛い物が多く存在しています。
最新技術の原理は語れるが、それをビジネスの課題にどう適用できるか、費用対効果や実現可能性を全く考慮できない人を想像しやすいですが、現実はより残酷です。

本当に大学に所属し研究し論文を執筆していたり、arXiv(査読前の論文原稿が閲覧できるリポジトリ)等で日々論文を読んでいるならまだしも、最近多いのが東京大学の松尾岩澤研究室の公開講座を終了しただけでさも生成AIに精通し研究者のような振る舞いをする方々が後を立ちません。

ビジネス領域で切り取ると、求められるのはLLMの原理、モデル構造、最新論文を深く理解し、その技術的限界と進化の方向性を説明できる人のはずです。

もちろん、OpenAI社やGoogle社が公開している公式ブログを閲覧しているのは最低条件と言えるでしょう。

タイプC:生成AI活用を推進できる人

生成AIコンサルタントや生成AI研修講師や生成AI系コミュニティで一番多いのが自称「生成AI活用を推進できる人」です。

求められるのは、タイプA:生成AIを使える人 でありかつ タイプB-1 or 2:生成AIに詳しい人 であることに加えて全社的な導入推進、文化醸成、チェンジマネジメントができる組織開発論や部署横断型の事業開発経験 / 実績です。

タイプA:生成AIを使える人 でありかつ タイプB-1 or 2:生成AIに詳しい人 であれば、その時点で市場価値は極めて高くタイプC:「生成AI活用を推進できる人」もかねている可能性は高いですが、一方で自称生成AIコンサルタントや生成AI研修講師の大多数を締めるのが「声だけ大きいインフルエンサー」タイプで: 派手なデモ見栄えの良い箇所だけ切り取ることは得意だが、組織の摩擦解消やセキュリティポリシーの地味な調整や細かいフローの構築から逃げ、仕組み作りができない人は少なくありません。

必要なのは組織変革の牽引者であり、経営層と現場の間に立ち、業務整理や改善とともに新しいルールや制度設計ができる人のはずです。

タイプD:生成AIで事業成果創出まで支援できる人

生成AI活用の目的として業務効率化や時間短縮をあげる方々もいらっしゃるかと思いますが、これらは所詮KPIでありKGIは新たな成果創出であるはずです。それを支援するためには特定の高度な課題解決、戦略的コンサルティングが必要になります。

生成AIツールのベンダーに圧倒的に多いのが「ツール押し売りコンサル」です。企業の課題を聞かずに、自社が扱う特定の生成AIツールの導入だけを提案し、導入後の効果測定にコミットしないもしくは恣意的な効果想定を行う人々です。

求めるのは、本質的課題解決者であり企業の真の経営課題を見抜き、生成AIはその解決手段の一つとして提案できる、ビジネス・生成AI双方に精通した専門家となります。


実践!「ミーハー」を見抜くための質問集

巷の「自称専門家」やインフルエンサーを振り落とし、本質的な知識とビジネス実装の視点を持つ人物を見極めるための質問集です。企業の採用者の方々は是非実際の面接でご利用いただきつつ、学生の皆さんは少なくともこれらを回答できるように研鑚されることを強く推奨します。

タイプ質問例見極めポイント
A : 生成AIを使える人生成AIに指示を出す際、プロンプトのテクニックや構造よりも、最も重要で、結果を左右するポイントは何ですか?言語化されていない本質的な知見。プロンプト作成を「相手への説明」と捉え、「新卒にもわかるように説明する意識」や「前提知識の言語化」「自信の無意識な部分を可視化すること」といった、思考プロセスそのものの再考に言及できるか。単なるテクニック論では答えられません。
『生成AIにインプットする情報』と『人間が頭の中でインプットを再構成するプロセス』との間に、生じうる差異を回避する手法はありますか?自己認識と生成AIへの理解の深さ。「自分が無意識に理解している前提」を生成AIは知らないリスクという情報の非対称性を理解し、確認作業の重要性を認識しているか。このズレを埋める工夫こそが、本当のプロンプトエンジニアリングであると認識しているかを問う。
B-1 : 生成AIに詳しい人 (ビジネス領域)最新のベンチマークで高いスコアを出しているLLM(例:Gemini 3 Pro)と、対抗LLM(例:GPT-5)を比較したとき、ベンチマークのスコア以外で、採用を決める最も重要なトレードオフは何ですか?技術の裏側にある実務上の欠陥や機能の成熟度を理解しているか。ベンチマークを鵜呑みにせず、運用・連携のしやすさやデータ主権など、ビジネスの視点で判断できるか。
生成AIを活用してビジネスプロセスの「生産性」を向上させたとして、その効果を『時間短縮・コスト削減以外の指標』で測るなら、何をKPIにしますか?経営戦略的な視点を持っているか。「顧客満足度向上」や「市場投入までのリードタイム短縮」など、売上やブランド価値に結びつく視点を語れるか。
B-2 : 生成AIに詳しい人 (アカデミック領域)ファインチューニングとRAGは、それぞれどのような技術的制約を抱えていますか?技術の限界を深く理解しているか。ファインチューニングの「ハルシネーション増幅リスク」や、RAGの「検索結果の品質依存性」など、原理に基づくデメリットを説明できるか。
大規模言語モデル(LLM)から小規模言語モデル(SLM)への移行やモデル蒸留といった技術は、企業が生成AIを活用する上で、どのような技術的・戦略的なメリットをもたらしますか?実装と効率化への視点。SLM/蒸留がもたらす「推論速度の向上(レイテンシー改善)」「エッジデバイスへの展開」「特定タスクへの専門化」といった実務的な利点を、技術的原理に基づき説明できるか。
C : 生成AI活用を推進できる人社内に生成AIを導入する際、最も抵抗が大きいと予想される部門と、その抵抗を乗り越えるための具体的な最初のステップは何ですか?組織のダイナミクスとチェンジマネジメントの視点を持っているか。抵抗の理由を「心理的な不安」や「既存プロセスの破壊」といった組織論で具体的に語れるか。
成功事例が出始めた後、生成AI活用を全社に定着させるために、評価制度や人事制度にどのような変更が必要だと思いますか?仕組み化と文化醸成への意識があるか。単なる啓発活動で終わらせず、生成AI活用を「評価される行為」に変えるという、経営戦略レベルの視点を問う。また、これらを含めたロードマップを提言できるか。
D : 生成AIで事業成果創出まで支援できる人「生成AI導入で人件費を30%削減したい」という相談を受けた場合、あなたはまず最初に何を尋ね、どのような提案をしますか?顧客の本質的課題を見抜く能力とコンサルティングのスキル。安易な削減提案ではなく、「削減の目的」や「削減後の人材の再配置」など、提案の前提を問えるか。
企業に提供する生成AI研修で、最も力を入れて教えるべきことは何ですか?本質的な価値提供への意識があるか。プロンプトより「業務の分解と再設計」や「生成AIが出した情報の検証方法」など、ビジネスリテラシーを重視できるか。

もちろんこれに答えれば完璧であるとは限りませんが、少なくともこれらの質問に答えられないようであれば疑ってかかることを強く推奨します。

まとめ

恐ろしい速度で訪れた生成AI時代、様々な形で生成AI人材を採用・育成・外注していくことが当たり前になっていきます。その中、薄っぺらいNG人材の採用や外部依頼は、時間とコストの無駄でしかありません。

真に重宝されるのは、流行の表層を語る人材ではなく、アカデミックを避けず真摯に向き合い、日々自ら活用し”実体験に基づいた”知識がある人材です。そして生成AI以外に限らないビジネスリテラシーが高い人材だからこそビジネス課題を解決し本当の成果創出に至ります。是非この記事をきっかけに皆様の目が養われることを切に願います。

writer:宮﨑 佑太(生成AIアドバイザー)

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

シェア
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

生成AI・教育コンサルタント
株式会社NEDLAB 代表取締役
株式会社SAKI COO
青楓館高等学院 Probono Menter

学校法人河合塾や株式会社リクルートで新規事業開発に携わった後に起業。教育・HRコンサルティングと事業開発支援事業を手掛ける。2023年からは生成AIを活用した事業開発・導入・運用支援事業を開始し、EdTech・HRTech企業や地方自治体を中心に数十社の支援も行う。現在、複数社でDX顧問・生成AIアドバイザーを務める。

目次