本記事を10秒でまとめると
OpenAIとDisneyは、動画生成AI「Sora」を中心とした3年契約の提携を正式に発表した。200超のディズニー系キャラクターが生成対象となるが、実在俳優の肖像や声は含まれない。一部のAI生成動画はDisney+で公式配信される予定で、出資やAPI採用も含む戦略提携となっている。
何が起きたのか
2025年12月、OpenAIとThe Walt Disney Companyは、動画生成AI「Sora」を軸とした包括的な提携を発表した。契約期間は3年間で、SoraおよびChatGPT Imagesにおいて、Disney、Pixar、Marvel、Star Warsに属する200超のキャラクターが利用可能になる予定です。
対象となるのは、公式発表上「animated、masked、creature characters」と明示されているキャラクター群であり、いわゆる実写俳優そのものを再現する用途は含まれていない。開始時期は2026年初頭が見込まれています。

SNSで拡散されている情報との違い
SNS上では「ディズニーキャラが自由に使える」「何でも生成できる」といった表現も見られますが注意が必要です。公式発表のトーンは明確に異なっており、実在タレントの肖像権や声は契約対象外であり、生成可能な表現には安全面・権利面のガードレールが設けられる前提です。
従って、山寺宏一さんの声を使って映画アラジンのジーニーの動画を作るは明確にNGと言えます。
また「DisneyがOpenAIを全面採用」といった表現も見られますが、正確にはDisneyがOpenAIの主要顧客となり、APIを用いた新機能開発や、従業員向けにChatGPTを導入するという位置づけにすぎません。
Disney+でAI生成動画が配信される意味
今回の提携で注目されるもう一つの点が、Soraで生成された動画の一部がDisney+で公式に配信されると言うことです。これはユーザーが生成した動画をそのまま並べるという意味ではなく、Disney側が選定・編集した作品をキュレーションして掲載する形となります。
AI生成コンテンツを「ユーザーが個人的に生成したコンテンツ」としてではなく、「公式コンテンツの一部」として扱う動きは、エンタメ業界としては過去にない極めて踏み込んだ判断と言えます。
これまで生成AIと著作権IPの関係は、黙認、対立、訴訟といった不安定な状態が続いてきた。今回の提携は、その構図に対し「公式に許諾されたルート」を明確に提示した点で大変大きな意味を持ちます。
さらに、Disneyは単なる利用企業ではなく、OpenAIに10億ドルを出資し、ワラントも取得しています。これは、DisneyはChatGPTを外部ツールとして使う段階から、AI基盤そのものに関与する戦略へと踏み出したことを示しています。
OpenAIとDisneyは「責任あるAI利用」の共同基準を策定するとしており、クリエイター保護や安全性についても強調されています。重要なのは、ChatGPTが制作現場を置き換えるというより、制作工程の一部として組み込まれる方向が明確になったと言えるでしょう。
生成AIは、もはや実験的なツールではなく、管理された制作インフラとして扱われ始めていることをビジネスパーソンも認識を改めないといけません。
現時点で分かっていないこと
一方で、まだ明らかになっていない点も多数あります。
例えば、料金体系、商用利用の可否、地域制限、生成物の二次利用ルールなど、実務的に重要な条件は今後の発表を待つ必要があります。また、どの程度までキャラクター表現が許されるのかは、実際のUIやポリシー実装を見なければ判断できません。
まとめ
今回のOpenAI×Disney提携は、「夢のコラボ」というより、今までグレーゾーンであった画像生成・動画生成と知的財産侵害における問題について一つの落とし所が見出され、生成AIがより社会実装されていく様子を示す良い事例と言えます。
今後ビジネスにおいては生成したものが商業利用可能なのか、誰のものなのかと言う視点を今以上に強めないといけません。むしろ、注目すべきはモデル性能ではなく、契約、ガバナンス、責任設計こそ重要であるかもしれません。
生成AIを巡る議論は、「何ができるか」から「どこまで使ってよいか」へと、確実に軸足を移し始めており生成AI業界の最新ニュースをチェックできているかがビジネスマンや企業価値に直結してきてます。是非、日々AIインサイトで価値を上げていきましょう。
writer:宮﨑 佑太(生成AIアドバイザー)
