2025年12月15日|発行:サンデーAI編集部
今週の生成AI NEWS
- OpenAI、最新モデル「GPT-5.2」をChatGPTとAPIで正式提供開始
- Google、Gemini APIでエージェント向け「Interactions API」を公開
- Dify、知識ベースをマルチモーダル対応へ
- Anthropic、SlackからClaude Codeへ委譲する統合を発表
- 米国政府、AIに関する大統領令と運用指針を公開
今週は、OpenAIの最新モデル「GPT-5.2」の正式リリースを中心に、主要生成AIベンダー各社からモデル更新・エージェント機能・開発統合に関する発表が相次ぎました。
モデル性能そのものだけでなく、「どの場面で・どのモデルを使うのか」「どう業務に組み込むのか」といった運用設計・ガバナンスまで問われるアップデートが多い1週間です。
今週のAIニュースダイジェスト( 5 件)
OpenAI、最新モデル「GPT-5.2」をChatGPTとAPIで正式提供開始
OpenAIは12月11日、最新モデル「GPT-5.2」を正式にリリースしました。GPT-5.2は、プロフェッショナル用途や長時間稼働エージェントを想定した最上位モデルと位置づけられています。
ChatGPTでは GPT-5.2(Instant / Thinking / Pro)が有料プラン向けに段階的に提供され、APIでは Responses API / Chat Completions API を通じて利用可能です。推論制御(reasoning parameter)や最上位の推論レベル(xhigh)への対応も明示されています。
ここがミソ!: ChatGPTの表示名とAPIモデル名が明確に分かれたことで、プロンプト管理・監査ログ・費用配賦の設計見直しが実務上の重要ポイントになります。
参考記事:【ChatGPT】GPT-5.2 Proは何が“別次元”なのか?

Google、Gemini APIでエージェント向け「Interactions API」を公開
Googleは12月11日、Gemini APIにおいて「Interactions API(Beta)」を公開しました。あわせて、調査タスクを自律的に計画・実行・統合する「Gemini Deep Research Agent(Preview)」も発表されています。
単発の生成ではなく、マルチステップのリサーチワークロードを前提としたAPI設計が特徴です。
ここがミソ!: Geminiは「エージェントをAPIでどう組むか」を正面から提示し始めており、調査・要約・分析系業務の自動化が現実的な選択肢になりつつあります。
Dify、知識ベースをマルチモーダル対応へ
Difyは12月11日、v1.11.0をリリースし、Knowledge Baseがテキスト+画像を扱える「マルチモーダル対応」になりました。
Markdown内の画像自動抽出や、画像を含むドキュメントを前提としたRAG構成が可能になります。続くv1.11.1では、重要なセキュリティアップデートも含まれています。
ここがミソ!: 社内PDFやスライド、スクリーンショットなど、「実務で本当に使われている資料」を前提にしたRAGが組みやすくなりました。
Anthropic、SlackからClaude Codeへ委譲する統合を発表
Anthropicは、Slack内からClaude Codeへ作業を委譲できる「Claude Code in Slack」を研究プレビューとして公開しました。
Slackでの会話から「coding intent」を検出すると、Claude Code(Web)へルーティングされ、開発作業が進行します。
ここがミソ!: 開発作業が「ツール起点」ではなくコミュニケーション起点で始まる設計になっている点が特徴です。
米国政府、AIに関する大統領令と運用指針を公開
米国では、AIに関する大統領令(Executive Order)と、それに付随するFact Sheet、OMBメモ(M-26-04)が公開されました。
政府調達や行政機関におけるAI活用・統制の枠組みが示されています。
ここがミソ!: 民間企業に直接の規制がかかる内容ではありませんが、「政府がどうAIを使おうとしているか」を読む資料として重要です。
注目トピック解説
トピック1:Anthropic「Claude Code in Slack」が示す“委譲型エージェント”の実像

Anthropicは、Slack上の会話から開発作業をClaude Codeへ委譲できる「Claude Code in Slack」を研究プレビューとして公開しました。
本機能の特徴は、Slackで @Claude をメンションして依頼を投げると、会話内容を解析し 「coding intent(コーディング意図)」 を検出した場合、通常のClaude Chatではなく、Web版のClaude Codeセッションへ処理を自動ルーティングする点にあります。
これは単なる「Slack連携ボット」ではありません。Anthropicは、
- 相談・壁打ち(Claude Chat)
- 実装・編集(Claude Code)
という役割分担を前提にし、人がツールを切り替えるのではなく、Claude側が作業の性質を判断する設計を採っています。
「ツール選択」から「委譲設計」へ
従来の生成AI活用では、ユーザーが「これはChatGPTで聞く」「これはCopilotで書く」といった形で、作業内容に応じてツールを選択する前提がありました。
Claude Code in Slackでは、その前提が崩れます。Slackという日常的なコミュニケーション空間の中で、Claudeが「これはコード作業だ」と判断した時点で、適切な実行環境へ作業を委ねる流れが作られています。
この設計は、Claudeを「指示に答える存在」ではなく、業務フローの中で役割を持つ実行主体として扱い始めた兆候とも言えます。
一方で、この仕組みは万能ではありません。Claude Code in Slackを成立させるには、
- Claudeプランの有効化
- Claude Code on the webの利用設定
- GitHubリポジトリとの連携・認証
- Slackとの権限設計
といった前提条件が必要です。特に企業利用では、「誰が、どのリポジトリに対して、どこまで作業を委譲できるのか」という権限・監査設計を同時に考えなければなりません。
「このような「委譲型エージェント」が増えるほど、誰が・いつ・どの判断で生成AIに作業を任せたのかを記録できる設計が重要になります。
Slack起点の委譲は非常に便利で、小規模チームでほど効果を発揮しやすいでしょう。
一方で、便利さと同時に、ガバナンスや監査ログの整備が不可欠になります。そのため全社展開を考えると、GitHub連携やリポジトリ権限の整理、Claudeが変更を加えたコードの責任所在など、運用ルールを先に決めておかないと混乱を招きやすいとも感じます。「任せられる範囲」を明確にすることも、成功と失敗の分かれ目になりそうです。
企業利用では、「技術的にできるか」よりも「管理できるか」が先に問われるフェーズに入っています。」
トピック2:米国AI政策:大統領令とOMBメモは「何を縛り、何を促す」のか

今週、米国ではAIに関する大統領令(Executive Order)と、それに付随するFact Sheet、さらにOMB(行政管理予算局)によるメモM-26-04 が公開されました。これらの文書は、一般の企業ユーザーにとっては「直接の規制ではなさそう」「抽象的で読みづらい」と感じられるかもしれません。
しかし、これらは米国政府がAIをどう扱い、どう管理しようとしているかを示す重要な一次情報です。
整理すると、
- 大統領令:国家としてのAI活用・統制の方向性
- OMBメモ:連邦政府機関がAIを導入・運用する際の実務ルール
という関係にあります。
特にOMBメモでは、AIシステム導入時のリスク評価、説明責任、管理体制の構築について、より具体的な指針が示されています。
今回の文書は、現時点で民間企業に直接の義務を課すものではありません。しかし、
- 政府調達に関わる企業
- 公共分野向けAIを提供する事業者
- エンタープライズ向けAIを設計する企業
にとっては、「数年後に求められる水準」を先取りできる資料と言えます。
政府がAIに何を求めているのかを理解することは、将来の調達要件や評価基準への備えにもつながります。
「この種の政府文書は、今すぐ現場が変わるものではないであろう。ただし、数年後の”当たり前”として求められる基準の予告として捉えなくてはいけない。特に企業視点で考えるとエンタープライズ向けツールは説明可能性やリスク管理を後付けで対応するのは難しいため、初期設計からこのような政府の意向を認知・反映されているかは注意深く確認する必要がある。
フロントに立つセールス部隊が即座に説明できないようなベンダーはその時点で疑ってかからなければいけない。」
「組織の立場で見ると、生成AI活用はすでに「使うかどうか」の段階を越えています。問われ始めているのは、生成AIをどれだけ“管理可能な形”で使えているかです。
今回の大統領令やOMBメモは、その流れを後押しする内容であり、将来的に他国や民間ルールへ波及する可能性もあります。」
