Gemini 3 Proに構造的欠陥?話題のリサーチ機能を徹底分析

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本記事を10秒でまとめると

2025年11月、Googleが発表した最新モデル「Gemini 3 Pro」のWeb検索機能とDeep Research機能について、構造的な欠陥を指摘する声がコミュニティから上がっている。

Reddit上の技術系コミュニティに投稿された詳細な分析レポートは、Gemini 3 Proの検索機能が「OpenAIを含む他のAIプラットフォームと比較して、圧倒的に劣っている」と主張している。

本記事では、このReddit投稿を出発点として、Google公式ドキュメントの技術的検証、ChatGPTとの競合比較、そして実際の検証実験を通じて、Gemini 3 Proの検索機能における問題の実態を明らかにする。


Gemini 3 Proとは

Googleが2025年11月に公開したこのモデルは、単なる“チャット向け言語モデル”を超えて、マルチモーダル入力(テキスト、画像、音声、動画、PDF、コード等)を統合的に処理できる、最先端の「汎用推論モデル」です。

主な特徴

  • 高度な推論能力:複雑な論理展開、数学問題、科学的考察、プログラミングやデータ分析などにおいて、人間の専門家レベルに迫る性能。
  • マルチモーダル理解:単に文字だけでなく、画像・音声・動画・PDF・コードを混在させた情報を同時に解析でき、異なる媒体間の関連性を踏まえた洞察や処理が可能。
  • 大規模コンテキスト処理:最大で約100万トークンという広大な入力領域を持ち、大量ドキュメント・データ群・コードベースなどを一括で読み込み、包括的な解析や生成が可能。
  • エージェント機能・実用性:「単なる質問応答」ではなく、多段階のタスク遂行、自律的なコード生成やデータ処理、複数ステップのワークフロー推進などを見据えた実務適用能力が備わっている。

つまり Gemini 3 Pro は、知識の検索や文章生成にとどまらず、「複雑で多様な情報を統合し、『考え』『処理し』『生成する』」ことを目的とした、現時点で Google が提供する最上位の「汎用 AI プラットフォーム」です。


4つの構造的欠陥の詳細分析

Reddit投稿では、Gemini 3 Proの検索機能における以下の4つの構造的問題が指摘されています。

① 検索クエリの質が極端に悪い:「思い込み検索」の問題

Gemini 3 Proは「古い知識に引きずられた、極端に具体的すぎる検索クエリ(検索する時に使用した単語や単語の組み合わせ)」を発行します。例えば、「最新のGeminiモデルは何か?」という質問をすると

  • Gemini 1.5 Pro 002 release details
  • Gemini experimental 1121 model details
  • Gemini 2.0 release date rumors

このようなクエリが現れます。これらは、Geminiの内部知識(2024年時点)に基づく具体的なバージョン番号を含んでおり、2025年11月に発表された「Gemini 3 Pro」を発見できていません。

対照的に、ChatGPTは以下のような広範な探索型クエリから開始します。

  • google gemini latest model release version december 2024 2025

これは生成AIの検索戦略における確証バイアス(Confirmation Bias)の一種と考えられており、Geminiは内部知識が正しいと「思い込んで」おり、その前提を検証する検索を行うが、前提が古い場合、最新情報を見逃してしまうのです。

【検索クエリ戦略の比較】

② Deep Researchの硬直的な計画:「事前確定型調査」の限界

Gemini Deep Researchは調査前に調査計画を生成しますが、この時点で以下の問題があります:

  • 計画が古い内部知識に基づいて生成される
  • 検索結果で新情報が見つかっても、計画の軌道修正ができない
  • ユーザーの指示を無視する傾向(文体やフォーマット指定など)

対照的に、ChatGPT Deep Researchは動的な調査プロセスを採用。検索結果を分析しながらリアルタイムで次の検索を決定し、予期せぬ発見にも柔軟に対応します。

【調査プロセスのフロー図】

③ 検索結果が「スニペット」のみ:Webページ本文を読めない構造的制約

多く指摘されている最も深刻な問題は、Gemini 3 ProがWebページの全文を読めず、検索エンジンが返す「スニペット」(ページ冒頭の数百字程度)しか見ていないというものです。

Google AI公式ドキュメントの分析により、この仮説が裏付けられます:

  • Grounding with Google Search: Google検索を実行し、検索結果のスニペットを取得。ドキュメントには「Webページの全文を取得する」とは明記されていない。
  • URL Context Tool: ユーザーが明示的にURLを指定した場合のみ全文取得。モデルが自律的に検索結果のページを深掘りする機能ではない。

つまり、Gemini 3 Proの検索機能は「分離型アーキテクチャ」で、モデルが検索結果のページを自律的に全文読解する仕組みが存在していません

対照的に、OpenAIのChatGPTは「統合型アーキテクチャ」を採用しています。Web Search機能がページ全文の取得と統合されており、検索結果のページを自動的に取得・解析しています。

【検索アーキテクチャの比較】

④ 検索プロセスの透明性欠如

Gemini 3 Proの検索プロセスは「ブラックボックス」で、どのような検索クエリを発行したか、どのWebサイトを参照したかがデフォルトでは開示されません。この不透明性により、ユーザーは回答の根拠を普段利用している中で検証ができません。

対照的に、ChatGPTは検索クエリ、参照WebサイトのURL、各ソースからの引用箇所を明示的に表示しているので確認が容易です。


実際にやってみた

Reddit投稿と公式ドキュメントの分析に基づき、3つの実証実験を実施してみました。

実験①:検索クエリ戦略の違い

手順: Gemini 3 ProとChatGPT5.1に「最新のGeminiモデルは何か?」と質問し、検索クエリと回答を比較。

結果:

  • Gemini 3 Pro :
    具体的バージョンを含むクエリ(Gemini 1.5 Pro 002 release details等)を発行
    最新の「Gemini 3 Pro」(2025年11月18日)を見逃し、古い「Gemini 2.0 Flash Experimental」を最新と誤認


  • ChatGPT GPT-5.1 :
    広範なクエリ(google gemini latest model release version december 2024 2025)を発行
    → 正確に「Gemini 3 Pro」(2025年11月18日)を回答

Reddit投稿で指摘された「古い知識に引きずられる」という批判が実証されてしまいました。

実験②:Deep Researchの計画硬直性と完遂率

手順: Gemini 3 ProとChatGPT5.1に「OpenAI Responses API(2025年11月発表)の技術仕様書を作成してください」と依頼。

結果:

Gemini 3 Pro Deep Research:

  • 調査計画を生成(「OpenAI公式ソースを検索 → 分析 → レポート作成」)
  • 処理途中で「サーバーが処理能力の上限に達しています」エラーが発生し、完了せず

ChatGPT GPT-5.1 Deep Research:

  • 動的にOpenAI公式ドキュメント、Microsoft Learn、GitHub、技術ブログ(Qiita等)を検索・統合
  • 約8,000字の包括的な技術仕様書を完成

Geminiは調査計画段階でエラーを起こし、完了できなかった。何度か実行し完了しても、計画は「OpenAI公式ソース」に限定されており、サードパーティの実装例を取り込む柔軟性に欠けていました。「計画が硬直的で、予期せぬ状況に対応できない」という構造的欠陥も実証されました。

実験③:スニペット制約の実証

手順: Gemini 3 ProとChatGPT5.1に「https://github.com/openai/openai-python のREADMEを読んでインストール手順を詳しく説明してください」と依頼。

結果:

ChatGPTは「READMEの一番下に要件が書いてあります」「READMEの『Logging』セクションに書かれている」など、README後半の具体的なセクション名を明記。Geminiにはこれらの言及が一切ありませんでした。

「Geminiはスニペット範囲(ページ冒頭の数百字)の情報しか読み取れていない」という仮説が強く実証されました。


なぜこうなったのか?技術的・組織的考察

ChatGPTは以下のアプローチでGeminiの問題を回避しています

  • 探索型検索戦略:
    広い時間軸・キーワードでの初期検索 → 結果分析 → 必要に応じて深掘り
  • 適応型調査プロセス:
    公式ソースから開始 → 不足点を分析 → 動的にソース追加 → 統合と検証
  • 統合型アーキテクチャ:
    検索エンジンとページ全文取得が統合され、自動的に全文読解

技術メディアSection.aiの比較レポートでは、ChatGPT Deep Research(出力品質4.5/5)がGemini Deep Research(出力品質2.5/5)を上回り、「ChatGPTの勝利。出力品質の優位性が決定的」と結論づけられています。

一方で、Gemini 3 Proの検索機能における構造的欠陥は、以下の要因に起因すると考えられます

  • コスト最適化の優先:
    Webページ全文の取得・解析は数十倍のコストがかかる。コスト削減を優先し、情報の質が犠牲になった可能性。
  • 検索事業との内部対立:
    Googleの収益モデルは「ユーザーが検索結果のリンクをクリックし、広告を閲覧すること」に依存。AIが全文を読み取りクリック不要で回答を提供すると、広告収益が減少。
  • 組織的制約:
    AI部門と検索インフラ部門が分離しており、統合が進んでいない可能性。

Gemini 3 Proが軒並み高いベンチマークを達成し、OpenAI社がコード・レッドを出すほどの状態の最中、Googleも組織的収益構造的に大きな問題を抱えていると言えるでしょう。


まとめ

3つの実証実験により、Reddit投稿の指摘が単なる主観的な不満ではなく、再現可能な構造的問題であることがわかりました

  • 実験①: Geminiは最新の「Gemini 3 Pro」を見逃し、古い情報を最新と誤認
  • 実験②: Gemini Deep Researchは処理途中でエラーを起こし、完成できず
  • 実験③: GeminiはGitHub READMEの前半のみ読解、後半の高度な情報を見逃した

ビジネスパーソンにおいて、GoogleのGeminiがまさか検索に弱いという致命的な欠陥はとても衝撃的な事実かと思います。もちろん今後Googleは全力でこの欠陥を改善していくことを期待しますが、短期的にできる改修としては

  • 検索クエリ生成アルゴリズムの改善(広い時間軸・キーワードでの探索優先)
  • 検索プロセスの透明化(クエリ、参照サイト、引用箇所の明示)

などが考えられますが、一方でChatGPT 5.1に勝つためには

  • Deep Researchの動的調整機能導入
  • エラーハンドリングの強化
  • 統合型アーキテクチャの実現(検索結果のページ全文を自律的に取得・解析)

という技術的にも収益構造的にも大きなハードルをいくつも乗り越えないといけません。

Gemini 3 Proは推論能力やマルチモーダル対応では高評価を受けていますが、検索機能の欠陥はビジネスパーソンにとって致命的な制約です。

一方で、OpenAIのChatGPTは、統合型アーキテクチャと動的調査プロセスにより、現時点で最も実用的な検索機能を提供していると言えます。この優位性は、「検索事業との利害対立」という制約を持たないというOpenAIの組織的特性に起因しているのでしょう。

今後、Googleがこれらの制約を克服し、Gemini 3 Proの検索機能を改善できるかどうか、注視していく必要がありますが、現実的にはそれまでは高度な推論はGemini 3 Pro、リサーチ系はChatGPT 5.1と使い分けるのが最善でしょう。

writer:宮﨑 佑太(生成AIアドバイザー)

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この記事を書いた人

生成AI・教育コンサルタント
株式会社NEDLAB 代表取締役
株式会社SAKI COO
青楓館高等学院 Probono Menter

学校法人河合塾や株式会社リクルートで新規事業開発に携わった後に起業。教育・HRコンサルティングと事業開発支援事業を手掛ける。2023年からは生成AIを活用した事業開発・導入・運用支援事業を開始し、EdTech・HRTech企業や地方自治体を中心に数十社の支援も行う。現在、複数社でDX顧問・生成AIアドバイザーを務める。

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